斎藤與里

没年月日:1959/05/03
分野:, (洋)

日展参事、東光会々員斎藤與里は、5月3日、東京都豊島区の自宅で心臓マヒで逝去した。享年72歳。本名與里治。明治18年9月埼玉県に生れた。明治38年9月、京都の浅井忠、鹿子木孟郎のもとで素描を学び、同39年2月にフランスに留学した。パリでアカデミイ・ジュリアンに入り、ジャン・ポール・ローランスに油彩を学んだが、モーリス・ドニやシャヴァンヌの作品に惹かれるところ多かつた。41年に帰朝、その後は東京に居住して、西欧絵画の新しい動きを、文筆を通じて新聞、雑誌に紹介し、新人として期待されていた。大正元年、高村光太郎、岸田劉生等とフューザン会をつくり、同時に展覧会をひらいた。フューザン会は、西欧のフォーヴや印象派後期の作家たちの個性的な仕事に強く共鳴した人々の集団で、反官展的な革新運動として注目されていた。然し、翌年第2回展をひらいて会は解散し、斎藤は、官展に出品、大正5年の第10回文展の「収穫」で特選をとり、以後官展系の作家としてとどまつた。昭和2年には「水郷の朝」で再び特選となり翌年から無鑑査待遇をうけている。大正12年、春陽会第1回展の際客員に、13年には会員となつたが、この年、牧野虎雄などと、別に槐樹社を創立し、春陽会は第3回展に出品のみで15年には退会している。昭和6年、槐樹社は解散し、同7年、新に東光会を樹立し、同会々頭として晩年迄出品をつづけていた。また官展では昭和9年第15回帝展以後、しばしば審査員をつとめ、戦後、日展と変つてからは参事の役にあり、32年迄毎年出品をつづけていた。

作品略年譜
大正元年 フューザン会第1回展「落日」「景色」「花畑の洪水」「木陰」「静物」等10点
大正2年 フューザン会第2回展「異人館」「晩香寮」「菊の花」等19点
大正4年 第9回文展「朝」(文展初入選、署名与里治)
大正5年 第10回文展「収穫」«特選»
大正7年 第12回文展「春」(この年から与里の署名)
大正8年 第1回帝展「一日」(三画対)
大正12年 春陽会客員となる。
大正13年 帝展、春陽会展ともに出品なし。牧野虎雄等と槐樹社を創立する。
大正14年 春陽会3回展「諏訪湖畔の宿にて」「部屋の一隅」「雑魚すくい」他1点。槐樹社2回展「裸婦」他
大正15年 春陽会退会
昭和2年 第8回帝展「水郷の朝」«特選»
昭和3年 第9回帝展「雪の朝」(無鑑査待遇)。槐樹社5回展「冬日小景」等13点
昭和4年 第10回帝展「稔る秋」(無鑑査待遇)。槐樹社6回展「書見図」「由布院風景」等12点
昭和5年 第11回帝展「春の夕」(無鑑査)。槐樹社7回展「少女」他
昭和6年 第12回帝展「製塩」(無鑑査)。槐樹社解散
昭和7年 第13回帝展「海女」(無鑑査)。東光会創立
昭和8年 東光会第1回展「金魚」「溪流」「密柑山」他
昭和9年 第15回帝展「秋晴れ」(審査員となる)
昭和10年 東光会3回展「花」「南紀風景」(1-4)「合奏」他
昭和12年 第1回文展「海辺秋景」(審査員)。東光会第5回展「K子像」
昭和13年 第2回文展「暁の金剛山」(審査員)。東光会第6回展「島の娘」
昭和15年 奉祝展「利根川」。東光会第8回展「阿蘇の噴煙」「山村」「支那服の少女」他
昭和16年 第4回文展「山村朝色」(審査員)。東光会第9回展「篠島風景」「海辺秋色」「野鳥」他
昭和17年 第5回文展「おひるやすみ」(無鑑査)。東光会第10回展「那須山岳」「早春山色」「塩原風景」他
昭和18年 第6回文展「夏の小川」(審査員)。東光会第11回展「菜の花」「初夏の冨士」他
昭和19年 戦時特別文展「稔る秋」(男躰山遠望)。東光会第12回展「山村朝色」「山村小雨」「桃色の冨士」
昭和21年 第2回日展「晩秋の赤城山」
昭和24年 第5回日展「柿」(審査員)。東光会第15回展「花を挿す」「鳩」「トマト」
昭和25年 第6回日展「秋海棠」。東光会第16回展「花あそび」
昭和26年 第7回日展「初秋の利根川」(この年日展参事となる)。東光会第17回展「夏の沼辺」他
昭和27年 第8回日展「夏の朝」(審査員)。東光会第18回展「紙風船」「お盆頃」
昭和28年 第9回日展「裏磐梯」。東光会第19回展「梅咲く窓」他25点回顧出品
昭和29年 第10回日展「朝」。東光会第20回展「大野寺石仏」「十五夜」
昭和30年 第11回日展「吾妻小冨士」。東光会第21回展「伊豆山」「食間」
昭和31年 第12回日展「晩秋」。東光会第22回展「つみくさ」
昭和32年 第13回日展「畑毛の冨士」。東光会第23回展「山峡秋色」
昭和33年 東光会第24回展「春の夜」
昭和34年 第2回日展「静物」(遺作)。東光会第25回展「桜島」「三段峡」「バラ」「夕陽」等10点

出 典:『日本美術年鑑』昭和35年版(140-141頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「斎藤與里」『日本美術年鑑』昭和35年版(140-141頁)
例)「斎藤與里 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/8933.html(閲覧日 2024-04-19)

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