「興福寺国宝展」開催

2004年09月

2010(平成22)年に創建1300年を迎えるにあたり、長期的な復興事業に努めている興福寺は、所蔵する鎌倉期を中心とする文化財を紹介するために、9月18日より東京芸術大学大学美術館で同展覧会を開催した。同展覧会は、「Ⅰ興福寺鎌倉復興期の尊像」、「Ⅱ春日社寺曼荼羅の世界」、「Ⅲ興福寺をめぐる絵画―南都絵所の展開」、「Ⅳ解脱上人貞慶の事蹟」、「Ⅴ法相教学とその図像」、「Ⅵ中金堂再建へむけて」の6部からなり、運慶作「無著・世親両菩薩立像」をはじめとする国宝、重要文化財113件によって構成された。(会期、11月3日まで。以後、岡崎市美術博物館、山口県立博物館、大阪市立美術館、仙台市博物館を巡回。)

東京国立博物館本館リニューアルオープン

2004年09月

9月1日、東京国立博物館は、本館での常設展示を2003年7月につづき大幅に改め公開した。1階で公開されていたジャンル別展示では、彫刻、工芸、近代美術等の10分野を紹介するほか、企画展示室2室、寄贈者顕彰室を新たに開設した。また2階では、例えば飛鳥、奈良時代を「仏教の交流」、鎌倉時代を「禅と水墨画」のテーマにするなど、各時代の文化、美術の特色を示すように展示することが意図され、あわせて照明、ディスプレー等も大幅に改装され、「わかりやすい」展示が実現されたという。

「マティス展」開催

2004年09月

アンリ・マティスの没後50年を記念した回顧展が、9月10日より国立西洋美術館で開催された。内容は、20世紀を代表する画家の創作の「過程(プロセス)」、「変奏(ヴァリエーション)」に焦点をあて、出品作には油彩画、切り絵ばかりでなく、素描、版画、挿絵本、彫刻等120点により多彩な創造活動を紹介する構成となっていた。これまでの回顧展にはなかった創作の様相そのものに焦点をあてた企画だけに、これまでの学術的な研究の成果を示すとともに、「絵画表現」の豊かさと深さを知るための今日的な意味をもった展覧会となった。(会期、12月12日まで。)

「金属の変貌―近代日本の金工」展開催

2004年09月

「美術」概念の誕生とともにモダニズムと伝統の間で展開してきた近代の「金工」作品をふりかえる展覧会が、9月11日より高岡市美術館で開催された。内容は、「第Ⅰ章 西洋様式の受容・古典様式の移植」、「第Ⅱ章 西洋の新思潮の影響」、「第Ⅲ章 古典研究の成果」によって構成され、明治期から昭和戦前期までの作品120点が出品された。前掲の「〈彫刻〉と〈工芸〉―近代日本の技と美」展とともに、日本近代美術における「工芸」の展開と意味を検証する機会となった。(会期、10月10日まで。佐倉市立美術館に巡回。)

「琳派 RIMPA」展開催

2004年08月

「琳派」及び「琳派」的と評される表現の今日的な意味を問い直す展覧会が、8月21日より東京国立近代美術館で開催された。内容は、「1 光琳」、「2 宗達・光悦」、「3 江戸から明治へ」、「4 琳派の近代」、「5 RIMPAの世界」の5章から構成され、国内外の作品81点によって「琳派」作品から近代以降の現代美術にいたるまでの絵画、平面表現まで、日本美術にとどまらず、海外まで影響を与えたその「装飾」性の意味を検証する意欲的な企画となった。(会期、10月3日まで。)

「〈彫刻〉と〈工芸〉―近代日本の技と美」展開催

2004年08月

日本の近代彫刻及び工芸における立体造形表現を、伝統と洋風化の両面から見直そうとする展覧会が、8月24日より静岡県立美術館で開催された。内容は、「第1章 細工物の伝統」、「第2章 近代国家の彫刻―西洋との出会い・木彫からの出発」、「第3章 〈彫刻〉の確立と実際―ロダニズムの諸相」、「第4章 〈彫刻〉と〈工芸〉の豊かな狭間」から構成され、113点の作品により、ロダンに象徴されるヨーロッパ近代彫刻の受容と江戸時代以来つづく造形感覚との間で展開しながら、現代までの「一貫した伝統的な美意識」を見ようとする機会となった。(会期、10月24日まで。)

人間国宝指定

2004年07月

文化審議会(高階秀爾会長)は、7月16日、3人を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するように河村建夫文部科学大臣に答申した。「工芸技術の部」では、備前焼の伊勢崎淳(68、本名伊勢崎惇)、彫金の中川衛(57)、ほかに沖縄県久米島に伝承する「久米島紬」を新たに重要無形文化財に指定し、また「久米島紬保持団体」を認定するように答申した。これにより、現在の人間国宝は、115人となった。

地中美術館開館

2004年07月

香川県香川郡直島町に地中美術館(財団法人直島福武美術館財団)が、7月18日に開館した。敷地面積は9,990平方メートル、施設は、すべて地下に設けられ、地下3階、延床面積2,573平方メートルで、設計は安藤忠雄による。「自然と人間を考える場所」をコンセプトとして、クロード・モネの「睡蓮」(1915~26年頃)をはじめ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品が常設展示されている。また、自然と対話し、自然と芸術の関わりへと思いを促す場として、植物数百種を配した「地中の庭」が設置されている。

「平成大修理完成記念 周防国分寺展」開催

2004年06月

奈良時代、全国各地に創建された国分寺のなかでも、今日まで創建期と同じ場所でほぼ規模を同じくする同寺の歴史を紹介する展覧会が、6月25日より山口県立美術館で開催された。同寺は、1997(平成9)年より金堂の解体修理をすすめていたが、同年9月の完成を記念した展覧会で、国指定重要文化財の「日光・月光菩薩立像」、「四天王立像」等をはじめ、山口県下の文化財も含めて仏教文化を紹介する展覧会となった。(会期、8月1日まで。)

「世紀の祭典万国博覧会の美術―パリウィーンシカゴ万博に見る東西の名品」展開催

2004年07月

2005年の日本万国博覧会(愛知万博)開催を記念して、19世紀の万国博覧会を美の側面から回顧する展覧会が、7月6日より東京国立博物館で開催された。内容は、「第Ⅰ部  万国博覧会と日本工芸」、「第Ⅱ部 万国博覧会の中の西洋美術」によって構成され、第Ⅰ部では日本が初めて参加した1867(慶応3)年のパリ万博から19世紀後半、世界各地で開催された万博において、日本が工芸作品を中心にどのように展示し、また海外からどのように評価されたかを当時の出品作品を中心に出品された。また第Ⅱ部では、それぞれの万博に出品された西洋絵画、彫刻等が展示され、当時各国の文化を代表する存在であった作家たちが一堂に会する展示となった。(会期、8月29日まで。大阪市立博物館、名古屋市博物館に巡回。)

「コピーの時代―デュシャンからウォーホル、モリムラへ」展開催

2004年06月

現代美術のひとつの表現としてすでに認知されている「引用と複製」をテーマにした展覧会が、6月5日より滋賀県立近代美術館にて、同美術館の開館20周年を記念して開催された。内容は、現代美術の多様な展開の跡を、「はじまりとしてのデュシャン」、「大衆文化からの引用」、「複製としての貨幣」、「盗め『日本美術史』」、「盗め『西洋美術史』」、「オリジナルなきコピー」の6章から構成し、国内外の作品137点が出品された。(会期、9月5日まで。)

「生人形と松本喜三郎」展開催

2004年06月

いずれも熊本市出身で、幕末、明治期に「生人形師」として活躍した松本喜三郎と安本亀八が製作した「生人形」を一堂に紹介する展覧会が、6月5日より熊本市現代美術館で開催された。見世物興行の細工物のひとつとして人気を博しながら、今日では忘れ去られた「生人形」を日本の「近代」化が生んだ表現として見直すことを目的に企画されたものであった。そのリアリズム故に民衆的な見世物から医学的、民俗学的な資料と変化していき、いつしか忘れ去られてしまったが「美術」という既成の領域を見直すためにも、海外に流出した作品の里帰りをふくめて展示するという画期的な試みとなった。(会期、8月15日まで。大阪歴史博物館に巡回。)

国特別史跡高松塚古墳の劣化の公表

2004年06月

文化庁と東京文化財研究所は、国特別史跡高松塚古墳(奈良県明日香村)の石室の壁画(国宝)のうち西壁に描かれた白虎が、1972年の発見当時より劣化していることを公表した。

第23回土門拳賞受賞者決定

2004年04月

昨年一年間に作品を発表したプロ、アマを問わない写真家を対象とする同賞(毎日新聞社主催)の第23回の受賞者に、写真展「PERSONA」を開催した鬼海弘雄(59)が決定した。同賞受賞作品展が、4月26日から5月15日まで銀座ニコンサロンで開催された。

史跡名勝の指定

2004年05月

文化審議会(高階秀爾会長)は、5月21日、韮山役所跡(静岡県韮山町)など17件を史跡に、また竹林寺庭園(高知県高知市)などを名勝に、ほかに4件を天然記念物に指定するよう、河村建夫文部科学大臣に答申した。

第29回木村伊兵衛写真賞受賞者決定

2004年04月

故木村伊兵衛の業績を記念して朝日新聞社が、昭和50年に創設した同賞は、沢田知子(個展「Costume」、大阪・サードギャラリーAya、2003年に対して)に決定した。授賞式は、4月20日に有楽町マリオン・朝日スクエアで行われた。

「十二神将―守護神集結」展開催

2004年04月

十二神将像の造形美と当時の文献等からうかがわれる信仰の諸相に焦点をあてた展覧会が、4月22日より神奈川県立金沢文庫で開催された。同文庫がある神奈川県金沢区の称名寺には、鎌倉時代に描かれたとされる十二神将の画像(12幅)が伝えられており、近隣の寺院にも十二神将の彫像や画像が残されている。近年の学術調査の成果をもとに、これらの文化財を一堂に展示する機会となった。(会期、5月30日まで。)

第11回日本文化芸術振興賞受賞者決定

2004年03月

日本の伝統文化や現代芸術の分野での優秀な人材の顕彰と育成を目的にした同賞(財団法人日本文化芸術財団主催)の第11回の受賞者が決定した。同賞の日本現代芸術振興賞には、生け花作家中川幸夫(86)、奨励賞には、造形作家留守玲(28)、沖縄の染織文化研究の久貝典子(47)が選ばれた。3月31日、授賞式が元赤坂の明治記念館で行われた。

建造物の重要文化財指定の答申

2004年04月

文化審議会(高階秀爾会長)は、4月16日、「出雲大社」(島根県大社町)、万代橋(新潟県新潟市)など、建造物10件を重要文化財に指定するように河村建夫文部科学大臣に答申した。

「南宋絵画―才情雅致の世界」展開催

2004年04月

国内収蔵の南宋絵画に焦点をあてた初めての展覧会が、4月17日より根津美術館で開催された。固有の民族文化の大成につとめ、「才情雅致」と評された文人、士大夫階層に支えられて生まれた南宋絵画は、中国絵画史の上からも特筆すべき時代を形成した。鎌倉、室町時代に日本に舶載された優品が少なくないが、これら68件を一堂に展覧する画期的な機会となり、国内外の研究者の注目をあつめることとなった。(会期、5月16日まで。)

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