竹内栖鳳意見書提出 

記事番号:00054
年月:1936年05月

帝国美術院会員竹内栖鳳は、予てより湯河原に在つて帝展改革に関する意見書の草案を練つてゐたが、愈々之を完成して、五月十六日郵便で平生文相宛に提出した。其の要旨は大略左の如きものである。 (一)昨年の帝国美術院改革は美術界総体の幸福と円満なる発展のための自覚が極めて貧弱であつた。殊に帝国美術院が直ちに展覧会に関聯を有つ現時の機構に於いては到底思慮ある改革とは考へ得られない。其の意味に於て帝国美術院とその展覧会は分離すべきものである。 (一)昨年の改革案及びその実施は各方面に相当の無理が押されたやうで、之は文部省の権威で成立し且つ押し続けられたが、斯かる権威なくとも成立し且つ実行し得る改革でなければならぬ。 (一)無鑑査に関する新規定は何等の改革でなく旧帝展の余弊を套襲するに等しい。然も多数決によって参与、指定、附則などに分類することは作家の社会的資格を無慈悲に公表し、それ等作家の発展や将来性を人為的に封殺する如き観を呈する。 (一)美術は常に流派等を異にする各団体が対抗して各自特色を練磨して発達するものである従つて文部省が美術を奨励する要点もこれ等諸団体の存立を認め、これを統括的に管理扶育することに在るべきで、之が自分の官展改革の理想であり私案である。

登録日: 2014年04月11日
更新日: 2020年12月11日 (更新履歴)
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