長谷部満彦

没年月日:2015/09/08
分野:, (学)
読み:はせべみつひこ

 東京国立近代美術館工芸館の開館に尽力し、福島県立美術館館長、茨城県陶芸美術館館長を歴任した長谷部満彦は9月8日死去した。享年83。
 1932(昭和7)年3月31日宮城県仙台市に生まれる。父は、東京大学理学部教授を勤めた人類学者で学士院会員、文化財保護委員会専門委員等を歴任した長谷部言人。元東京国立博物館次長で東洋陶磁研究の長谷部楽爾は実兄。逗子開成高等学校卒業、1956年東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。神奈川県立博物館勤務を経て、東京国立近代美術館分館として計画されていた工芸館の設立準備室に採用された。77年7月工芸課主任研究官・陶磁係長(併任)となり、11月わが国で近・現代工芸を専門とする初の美術館となった工芸館の開館に尽力した。以降、近代工芸の作品収蔵と展示・普及活動を牽引し、「現代日本工芸の秀作―東京国立近代美術館工芸館・開館記念展―」をはじめ、79年「近代日本の色絵磁器」展や81年「石黒宗麿:陶芸の心とわざ」展等の企画展を担当した。82年工芸課長に就任して以降も、84年「河井寛次郎:近代陶芸の巨匠」展や1991(平成3)年「富本憲吉展」等、陶芸関連を主に多数の展覧会を企画し開催した。またイギリス・ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館を主にした在外での研究を踏まえて、明治時代初期の日本を訪れた初の工業デザイナーであるクリストファー・ドレッサーの作品収蔵と紹介に努め、工芸館に工業デザイン部門開設の基盤をつくった。さらに、その頃に日本の近代工芸を海外に紹介し文化として発信する事業が活発となり、82年ボストン美術館他アメリカ各地を巡回した「人間国宝展」をはじめ、89年ユーロパリア’89・ジャパンの催事としてベルギーで開催された「日本の現代陶芸展」や、90-91年北欧4カ国を巡回した「心と技―日本の伝統工芸」展、フランス・パリの三越エトワールで開催された92年「日本の陶芸―<今>百選展」や94年「人間国宝展―日本工芸の華」等を監修した。また現代を代表した藤本能道清水卯一ら数々の陶芸家の国内回顧展のほか、海外でも90年「三浦小平二の青磁」展や94年「十三代今泉今右衛門展」、96年「清水卯一の陶芸」展、98年「鈴木蔵の志野」展を監修し開催した。92年福島県立美術館館長就任、2000年開館の茨城県陶芸美術館館長を歴任し、近・現代の陶芸に関わる展覧会等を企画・開催した。文化庁の文化財保護委員会専門委員をはじめ日本陶磁協会理事や永青文庫評議員等を勤めたほか、82年以降日本伝統工芸展の鑑審査委員、83年以降日本陶芸展審査員・運営委員、県展等の各地で開催された多数の展覧会の委員も務めて、近代陶芸の発展を検証し陶芸を主に現代の工芸家らの制作を評価した。編集・著作に、『近代日本の色絵磁器』(淡交社、1979年)、『陶芸 石黒宗麿作品集』(毎日新聞社、1982年)、『松井康成 陶瓷作品集』(講談社、1984年)、『日本の美術11 No.306 陶芸―伝統工芸』(至文堂、1991年)、『原色日本の美術33 現代の美術』(小学館、1994年)、『富本憲吉全集2 富本憲吉の東京時代』(小学館、1995年)等がある。

出 典:『日本美術年鑑』平成28年版(550頁)
登録日:2018年10月11日
更新日:2019年06月06日 (更新履歴)
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