辻晉堂

没年月日:1981/08/18
分野:, (彫)

京都市立芸術大学名誉教授の彫刻家辻晉堂は、8月18日食道がんのため京都市東山区の自宅で死去した。享年70。本名為吉。ユニークな陶彫を中心として国際的に活躍した辻は、1910(明治43)年10月28日鳥取県日野郡に生まれた。31年に上京、洋画研究を志し、翌年独立美術研究所へ入り約1年間素描を学ぶが、33年第20回日本美術院展に「千家元麿氏像」を辻汎吉名で初出品し、木彫作家としてデビューした。独立美術研究所では堀内正和を識る。35年、第22回院展出品作「少女裸形」で奨励賞を受賞し院友に推挙され、同年新海竹蔵の推薦で日本美術院研究所に入る。39年第26回院展「婦人像」、41年第28回院展「村の男」で院賞第二賞を受賞、42年第29回展「詩人(大伴家持試作)」で日本美術院賞第一賞を受賞し日本美術院同人となる。また、38年得度して晉堂と改名した。戦後も57年まで院展に出品したが、58年に脱退し二紀会彫刻部委員となる。戦後、セメントや鉄を素材にした抽象彫刻に先鞭をつけ、昭和30年代からは陶彫による抽象作品に独自の世界を拓いた。57年サンパウロ・ビエンナーレ展に「鳥」他、翌年ベニス・ビエンナーレに「沈黙」他を出品し、国際的な評価を得た。また、日本国際美術展には59年の第5回から8回展まで、現代日本美術展には60年の第4回から6回展まで出品した他、堀内正和、山崎脩との「彫刻三人展」(66年西武百貨店)、「八木一夫辻晉堂展(67年、東京壹番館画廊)などを開催する。この間、49年に京都市立美術専門学校(のち京都市立芸術大学)教授に就任、63年には美術研究の目的で渡欧、66年にもジャパン・ソサエティの招待で欧米へ旅行した。64年頃、会費滞納のため二紀会より除名処分を受け、以後は京展の他、専ら個展で制作発表を行った。抽象的な陶彫作品の制作は、八木一夫らの走泥社に刺激を与え、その後の京都のオブジェ焼が国際的に注目される端緒を開いたが、最晩年は陶彫作品も具象へ帰っていった。76年に京都市立芸術大学を定年退官し、同年同学名誉教授となり、翌年京都市文化功労者となる。78年、『辻晉堂陶彫作品集』(講談社)を刊行した。没後、83年に「現代彫刻の鬼才 辻晉堂展」(8月3日-9月4日)が京都国立近代美術館で開催された。
主要出品歴
1933 20回院展 「千家元麿像」
1934 21回院展 「田中の頭部」
1935 22回院展 「首習作」「少女裸形」
1936 23回院展 「Y氏像」「腕をくんでゐる女」
1937 24回院展 「裸婦習作」「O氏坐像」「少女頭像」
1938 25回院展 「首」「福井博士像」
1939 26回院展 「出家」「婦人像」
1940 27回院展 「黒田氏像」「こども」
1941 28回院展 「夏のあした(平櫛先生古稀像)」「村の男」
1942 29回院展 「野良の父と子」「村の女」「詩人(大伴家持試作)」
1943 30回院展 「野良の父と子」「鶏と女」
1946 31回院展 「胸像」
1947 32回院展 「光木氏像」「岩澤惟安老師像」
1949 34回院展 「槙本氏像」「琵琶を弾く男」
1950 35回院展 「坐像」
1951 36回院展 「坐像」「立像」
1952 37回院展 「坐像」
1953 38回院展 「首」
1954 39回院展 「詩人」「旅から旅へ」「虚空はこういう風につかむものだ」
1955 40回院展 「トルソ」「クハンダ」
1956 41回院展 「切株」「時計」「旅行者」
1957 42回院展 「へんな服をきた人物」、4回サンパウロビエンナーレ「★々毿々」「時計」「鳥」
1958 39回ベニス・ビエンナーレ「沈黙」「馬と人」「山の人」「牡牛」「寒山」「巡礼者」「蛙」、12回二紀展「拾得」「灯」「人間(椅子に座っている人物)」「迷盲」
1959 5回日本国際美術展「詩人(これ我かまた我に非ざるか)」
1960 4回現代日本美術展「寒山」、14回二紀展「マウラ」「ホラ男爵」「詰込主義教育を受けた子供」「拾得」
1961 6回日本国際展「寒山(HAN SHAN)」、15回二紀展「颱風の四角な眼とムカデ」「薄暮の階段の石にすわるシッド」
1962 5回現代日本展「東山にて」(二点)、16回二紀展「水の中に」
1963 7回日本国際展「巡礼」、7回全国彫刻コンクール(宇部市)「牡牛(牛)」「山の人(山の男)」「呪術者」
1964 6回現代日本展「寒山(HAN SHAN)」
1965 8回日本国際展「寒拾(KANJYU)」
1966 3回国際現代彫刻展(パリ)「歩く壁」
1967 9回日本国際展「非化Q」

出 典:『日本美術年鑑』昭和57年版(281頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「辻晉堂」『日本美術年鑑』昭和57年版(281頁)
例)「辻晉堂 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9946.html(閲覧日 2024-12-06)

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