ドナルド・フレデリック・マッカラム (DONALD FREDERICK McCALLUM)

没年月日:2013/10/23
分野:, (学)

 カリフォルニア大学ロサンジェルス校名誉教授で、日本美術史研究者のドナルド・フレデリック・マッカラムは、10月23日、前立線癌の転移による闘病後、自宅で静かに息をひきとった。享年74。
 1939(昭和14)年5月23日、カナダ・ブリティッシュコロンビアのバンクーバーで生まれる。若いころはエジプト考古学に熱中し、57年に入学したカリフォルニア大学バークレー校では、中国学者のOtto J. Maenchen-Helfenの講義に触発されてアジア美術史の勉学に励んだ。62年学士号取得。ニューヨーク大学大学院に進学すると、アジア美術史家のAlexander Soperの指導のもと研究を進めた。彼は中国美術史をする予定だったが、当時は中国への渡航があまりにも難しい政治情勢であったため、専攻を日本美術史に変更。65年、J. D. R 3rd Fundを含めてさまざまな助成金を得て、博士論文の執筆のために日本に渡航。68年まで3年間の日本滞在中は、倉田文作西川新次久野健清水善三、上原昭一、井上正ら日本彫刻史研究者との知遇を得、また66年には生涯のパートナーとなる宮林淑子と出会う。
 69年UCLAの美術史学部に職を得て、在職期間中には学部長、UCLAの日本学センターの所長、UCLA東京スタディセンターの所長などを歴任した。73年、“The Evolution of the Buddha and Bodhisattva Figures in Japanese Sculpture of the Ninth and Tenth Centuries”をニューヨーク大学に提出し、博士号取得。当時日本国外ではほとんど知られていなかった9~10世紀の仏像に関する挑戦的な論考であった。同年には “Heian Sculpture at the Tokyo National Museum,” Part Ⅰと題し、71年に東京国立博物館で開催された《平安時代の彫刻》展の展評を発表。Artibus Asiae 35号に掲載されたこの展評が彼の最初の業績となった。その後、生涯を通じておこなわれた仏像研究は6世紀から19世紀の円空に至るまで非常に広範囲にわたり、古代日本に影響を与えた朝鮮半島の仏像についても論究し、地域的な広がりもみせた。研究対象も仏像にとどまらず刺青にまで及ぶ。Artistic Transformations of the Human Body(Marks of Civilization, 1988)に掲載された “Historical and Cultural Dimensions of the Tattoo in Japan” はその成果の一部として知られている。また日本国外で20世紀初頭の日本の近代洋画研究をはじめた最初期の研究者の一人であり、87年には “Three Taisho Artists: Yorozu Tetsugoro, Koide Narashige, and Kisida Ryusei” Paris in Japan:The Japanese Encounter with European Painting, St. Louis, 1987を公表。近代洋画家のなかでも松本竣介がお気に入りだったという。
 彼は非常に教育熱心で、教えることを心より愛していた。いつも鋭いウィットと温かいユーモアとジョークにあふれた刺激的な講義が行われ、UCLAでは例年予定よりも多くの授業が開講された。博士課程の学生に対しては、厳しいながらも親身になって根気よく向き合った、実に面倒見のよい良き指導者であった。
 UCLAで44年にわたり教鞭をとった後、2013(平成25)年6月に退職。その年の10月、彼のもとで学んだカンザス大学教授のSherry Fowler准教授らが「考古学・仏教・アバンギャルド:ドナルド・マッカラムの日本美術とのエンゲージメントを祝うシンポジウム」を企画し、研究者として指導者として卓越したキャリアを誇るマッカラムの業績を顕彰した。彼が学生に慕われていたことは、このシンポジウムをまとめたARTIBUS ASIAE VOL.LXXIV, NO.1, 2004に掲載される彼女の追悼文によく示されている。Sherry Fowler “Donald F. MacCallum(1939-2013),” Archives of Asian Art, Volume 63, Number 2, 2013, pp211-213も参照。
 このシンポジウムの後、2週間を経ないうちに息をひきとった。
 業績は論文等100編以上を数えるが、主要な著書には以下のものがある。
 Zenkoji and Its Icon: A Study in Medieval Japanese Religious Art. Princeton, N.J.: Princeton University Press, 1994
 The Four Great Temples: Buddhist Archeology, Architecture, and Icons of Seventh-Century Japan. Honolulu: University of Hawai’i Press, 2009
 Hakuho Sculpture. Seattle: University of Washington Press, Jan., 2012

出 典:『日本美術年鑑』平成26年版(468-469頁)
登録日:2016年09月05日
更新日:2019年02月13日 (更新履歴)
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