倉田文作

没年月日:1983/01/23
分野:, (学)

奈良国立博物館長、文化財保護審議会専門委員倉田文作は、1月23日肝腫瘍のため、奈良市の博物館長宿舎で死去、享年64。大正7(1918)年4月17日、画家、倉田重吉(白洋・春陽会創設者)の次男として千葉県安房郡に生まれた。長野県立上田中学校を経て昭和15年青山学院文学部英文科卒業、ついで同17年早稲田大学文学部文学科を卒業の後、同19年東洋美術国際研究会嘱託となる。同20年文部省社会教育局嘱託、22年国立博物館に入り、調査課嘱託を経て、23年文部技官、25年文化財保護委員会事務局美術工芸課彫刻部勤務となる。以後、同34年彫刻部主査、39年文化財調査官、41年事務局美術工芸課長を歴任、44年東京国立博物館学芸部長に転じる。同47年文化庁文化財保護部文化財鑑査官、50年奈良国立博物館長に就任、51年からは文化財保護審議会専門委員に任じた。この間、全国にわたる文化財調査をもとに、専門とする日本彫刻史の研究に多大な成果をあげ、国宝・重要文化財の指定を数多く手掛けた。また、修理保存、展示公開などに豊富な経験を有し、文化財行政の指導助言に当たり、生涯を通じ常にその第一線にあった。国立国際美術館評議員会評議員、国立歴史民俗博物館展示企画委員、国際交流基金運営審議会委員、奈良県及び和歌山県文化財保護審議会委員、日本放送協会近畿地方放送番組審議会委員、日本展示学会評議員会評議員、日本伝統工芸展鑑査委員など、多くの役職をもつ。国内のみならず海外においても、東洋美術品の調査研究はもとより、日米文化教育交流会議専門委員、ユネスコ・ローマ文化財保存修復研究国際センター理事兼財務委員を勤め、その他多くの国際会議に出席し、日本美術の啓蒙、普及、文化財の保護に貢献し、文化財の国際交流での功績も知られるところである。同56年博物館法施行30周年を記念して博物館振興の功績により文部大臣より表彰を受け、同58年従四位に叙せられ勲二等瑞宝章を受章した。
主要著作目録
著書・編著
長野県文化財図録(美術工芸篇) 長野県教育委員会 昭和30年2月
観世音寺重要文化財仏像修理報告書 福岡県教育委員会 昭和35年3月
仏像の像内と納入品併せて木彫像の構造論 救世熱海美術館 昭和40年1月
仏像のみかた(技法と表現) 第一法規 昭和40年7月
原色日本の美術第5巻密教寺院と貞観彫刻 小学館 昭和42年6月
奈良六大寺大観第2巻法隆寺2(彫刻) 岩波書店 昭和43年4月
奈良六大寺大観第8巻興福寺2(彫刻) 岩波書店 昭和44年7月
日本の美術44 貞観彫刻 至文堂 昭和45年1月
奈良六大寺大観第4巻法隆寺4(彫刻・書蹟) 岩波書店 昭和46年5月
ブック・オブ・ブックス 貞観彫刻 小学館 昭和46年8月
物別展「平安時代の彫刻」(東博特別展記念図録) 東京国立博物館 昭和47年3月
日本の美術86 像内納入品 至文堂 昭和48年7月
奈良の寺第16巻 法華堂と戒壇院の塑像 岩波書店 昭和48年11月
文化財講座「日本の美術」6 彫刻(平安) 第一法規 昭和51年10月
大和古寺大観第7巻海住山寺・浄瑠璃寺・岩船寺 岩波書店 昭和53年8月
日本の美術151 二王像 至文堂 昭和53年12月
在外日本の至宝8 彫刻 毎日新聞社 昭和55年7月
法華経の美術 共編 佼成出版社 昭和56年9月
奈良六大寺大観全14巻編集委員 岩波書店 昭和41~46年
論文
信州の新資料 信濃 昭和24年6月
銅造釈迦如来像(御物48体仏の内) ミュージアム 昭和26年6月
信濃の清水寺 ミュージアム 昭和32年5月
東寺の諸像 図録『東寺』朝日新聞社 昭和33年5月
東寺の八幡三神について 大和文華 昭和33年6月
中尊寺の諸像 図録『中尊寺』朝日新聞社 昭和34年11月
集古館木造普賢菩薩像について 三彩 昭和35年6月
風神・雷神像(妙法院) 国華 昭和36年1月
奈良来迎寺の善導大師像 ミュージアム 昭和36年1月
観世音寺の彫刻 国華 昭和36年8月
慈尊院弥勒仏坐像 仏教芸術 昭和37年12月
当麻寺本堂発見の板光背、台座残片について 当麻曼荼羅図譜文化財保護委員会 昭和38年3月
宝生家能面 ミュージアム 昭和38年7月
園城寺新羅明神像 古美術 昭和38年10月
熊野本宮家津御子大神像 古美術 昭和38年10月
甲州善光寺の弥陀三尊 信濃 昭和39年3月
善光寺如来考 国華 昭和39年5月
高野山の不動明王像 仏教芸術 昭和40年3月
東寺の仏像 図録『大師のみてら』東寺文化財保存会 昭和40年10月
法隆寺阿弥陀如来坐像(金堂)観音菩薩立像1、2 奈良六大寺大観法隆寺2 岩波書店 昭和43年
仏像彫刻の構造と技法(その1) 奈良六大寺大観法隆寺2 岩波書店 昭和43年4月
東大寺盧舎那仏坐像  奈良六大寺大観東大寺1 岩波書店 昭和43年8月
平安時代の金銅仏 ミュージアム 昭和44年2月
興福寺北円堂四天王立像 奈良六大寺大観興福寺1 岩波書店 昭和44年7月
興福寺板彫十二神将像 奈良六大寺大観興福寺1 岩波書店 昭和44年7月
美濃の白山、高賀山の虚空蔵信仰 ミュージアム 昭和45年4月
興福寺北円堂弥勒仏坐像 奈良六大寺大観興福寺2 岩波書店 昭和45年12月
興福寺世親・無著立像 奈良六大寺大観興福寺2 岩波書店 昭和45年12月
鎌倉初頭の興福寺再興と鎌倉彫刻 奈良六大寺大観興福寺2 岩波書店 昭和45年12月
仏像彫刻の構造と技法(その3) 奈良六大寺大観興福寺2附録8 岩波書店 昭和45年12月
文化財の模写、構造 月刊文化財 昭和46年4月
法隆寺観音菩薩立像(百済観音) 奈良六大寺大観法隆寺2 岩波書店 昭和46年5月
法隆寺聖徳太子及侍者像(聖霊院) 奈良六大寺大観法隆寺2 岩波書店 昭和46年5月
平等院鳳凰堂本尊像の光背 ミュージアム 昭和46年6月
播磨浄土寺の弥陀三尊像 仏教芸術 昭和46年6月
会津勝常寺の薬師三尊像 ミュージアム 昭和46年9月
叡尊をめぐる仏師たち 奈良六大寺大観西大寺 岩波書店 昭和48年5月
文化財の国際交流(ユネスコ専門家会議報告) 文化庁月報 昭和51年6月
鶴林寺太子堂の来迎壁について 文化庁月報 昭和51年7月
像内納入品について 重要文化財別巻1附録 毎日新聞社 昭和53年1月
カルコン・交流美術における美術品のケアに関する会議 文化庁月報 昭和53年1月
鎌倉・室町時代の美術 光村印刷 昭和53年2月
博物館、美術館のコレクション 文化庁月報 昭和53年3月
河内の国宝仏像 仏教芸術 昭和53年8月
稲沢の美術 『稲沢市史』研究編2 昭和54年1月
第10回カルコン報告 文化庁月報 昭和55年9月
最近のイクロムの活動 古文化財の科学25号 昭和55年12月
若狭の文化 若狭の古寺美術 昭和56年6月
ジャパンハウス・ギャラリーの法隆寺展 文化庁月報 昭和56年10月
イクロムの現状と近い将来 文化庁月報 昭和57年7月

出 典:『日本美術年鑑』昭和59年版(293-294頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「倉田文作」『日本美術年鑑』昭和59年版(293-294頁)
例)「倉田文作 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10229.html(閲覧日 2024-03-29)

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