関根伸夫

没年月日:2019/05/13
分野:, (美)
読み:せきねのぶお

 「もの派」を代表する美術家の関根伸夫は5月13日、米国・カリフォルニア州の病院で死去した。享年76。
 1942(昭和17)年9月12日、大宮市(現、さいたま市)に生まれる。父は埼玉県庁職員、母は小学校教諭、母の弟は中学で美術教諭。5人兄姉の三男。埼玉県立川越高校に入学、美術部に入部。同世代の部員に長澤英俊、中野武夫らがいた。浪人時代を経て、62年多摩美術大学に入学。学部時代に一度、新制作美術協会展に出品したが落選。65年に斎藤義重が油絵学科教授に、翌年には高松次郎が同学科講師に着任、同大学大学院を出る68年まで、この二人に師事。人が椅子に腰かけている情景や人が階段に並んでいる情景をスライドにてキャンバスに投影し、鉛筆で人の輪郭のみを描写する手法による<消去>シリーズなど、視覚的なトリックを導き出す仕組みを持つ一連の作品を展開。67年、最初の展覧会「個展個展」展(新宿・椿近代画廊、小林はくどうとの二人展)を開催、同年第11回シェル美術賞展で佳作賞受賞。68年、トリックス・アンド・ヴィジョン展(銀座・東京画廊、同・村松画廊)に「位相No.4」を発表。同年、第8回現代日本美術展のコンクール部門に「位相No.6」が入選、コンクール賞受賞。同年10月、第1回神戸須磨離宮公園現代彫刻展で、大地に円柱型(深さ2.6m、直径2.2m)の穴をうがち、掘り起こした土を穴と同じかたちに固めて隣に置いた作品「位相-大地」を発表、朝日新聞社賞受賞。関根は当時、「現代の美術は結局のところ新しい空間の解釈法を発見もしくは発明するしかない」と考えており、最も現代的で柔軟な空間の認識が可能であった位相幾何学に基づいた思考実験として、小清水漸、吉田克朗、上原貴子、櫛下町順子を制作助手に、本作品を制作。しかしながら、関根自身と小清水らは、その空間認識の実験の意図をはるかに越えた、穴と屹立する土の物質感に圧倒されたという。この作品は、後に「もの派」誕生の契機とされ、日本現代美術における転回点と評されることとなる。同年、第5回長岡現代美術館賞を「位相-スポンジ」で受賞。69年、銀座・東京画廊での初個展を開催、第1回現代国際彫刻展(箱根彫刻の森美術館)でコンクール賞受賞。また同年、第6回パリ青年ビエンナーレ(パリ市立近代美術館)では東野芳明コミッショナーの元、高松次郎田中信太郎、関根、成田克彦と結成した「ボソット・グループ」で参加、団体賞受賞。70年大阪万博、三井グループ館に「位相-大地」を再制作。70年、ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表としてステンレスの柱の上に自然石を置いた作品「空相」を発表、その後2年間のヨーロッパ滞在。帰国後、73年に株式会社環境美術研究所を設立。奥久慈憩いの森(1979年)、東京都庁舎シティーホール前「水の神殿」(1991年)、多磨霊園のみたま堂(1993年)など、国内外で数多くのモニュメントやパブリック・アートを手がける。1996(平成8)年、「「位相-大地」の考古学」(西宮市大谷記念美術館、図録編集=篠雅廣)で「位相-大地」誕生の状況や事実関係を関係者の証言や当時の資料によって掘り起こされた。2008年、多摩川アートラインプロジェクトの一環で田園調布せせらぎ公園にて「位相-大地」が再制作された。10年ころ上海へ、12年ころロサンゼルス近郊へ移住。14年に日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴが聞き取り調査を行い、ウェブサイトに公開(聞き手=梅津元、加治屋健司、鏑木あづさ)。没後2019(令和元)年、「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」(埼玉県立近代美術館)では関根伸夫資料(アーカイブズ)を展示。20年1月12日に「関根伸夫さんを偲ぶ会」(御茶ノ水・学士会館、発起人=小清水漸)が執り行われ、『追悼 関根伸夫』(多摩美術大学)が配布された。
 作品集に『関根伸夫1968-78』(ゆりあ・ぺむぺる工房、1978年)、関根伸夫+環境美術研究所作品集『風景から広場へ:環境装置としての美術』(商店建築社、1983年)、『風景を刻む』(プロセス・アーキテクチュア社、1987年)、『位相絵画』(環境美術研究所、1987年)など、著書に『半自伝:美術と都市と絵空事』(PARCO出版局、1985年)、『風景の指輪』(図書新聞、2006年)がある。

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(489頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「関根伸夫」『日本美術年鑑』令和2年版(489頁)
例)「関根伸夫 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2041001.html(閲覧日 2024-07-19)

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