山下大五郎

没年月日:1990/05/13
分野:, (洋)

 安曇野など、日本の山間・田野の自然を深く愛し、清澄な画風で知られた立軌会会員の洋画家山下大五郎は、5月13日午前1時50分、直腸ガンのため、東京都新宿区の河井病院で死去した。享年81。明治41(1908)年10月2日、神奈川県藤沢市に生まれる。後に洋画家となった原精一が近くに住んでおり、早くから親交があった。また、神奈川県立湘南中学校在学中に萬鉄五郎宅に出入りし、学ぶところがあった。大正15(1926)年同中学を卒業して東京美術学校師範科に入学。同校在学中は田辺至に師事し、また先輩である林武に指導を受け、同3年第9回帝展に「卓上静物」で初入選する。同4年、東美校を卒業し、神奈川県奈珂中学校(現県立秦野高校)で教鞭をとる。官展にはたびたび入選を重ねていたが、同12年第1回新文展に「中庭の窓」を出品して特選、同14年第3回同展では「おもて」で再び特選を受賞し、同17年第5回展には無鑑査出品している。また、同16年第1回創元会に「早春」「家庭風景」を出品する。同19年歩兵補充兵として召集され、終戦後3年間、カスピ海沿岸で俘虜生活を送った後、同23年に帰国する。戦後は官展、創元会を退き、牛島憲之須田寿らと立軌会を結成して同展を中心に活動する。初期から風景を多く描いたが、戦後しばらくは暗い鉄条網の中の俘虜をモチーフとし、その後、農村を描き始める。同28年第4回選抜秀作美術展に「開懇地風景」を招待出品、同33年第2回国際具象派展に「工場のある風景」「北海道(白老)風景」を出品するなど、立軌会以外でも作品の発表を行なった。同39年、中間冊夫島村三七雄原精一林武門下の友人達と欅会を結成する。同52年第16回展より国際形象展にも出品を続ける。この頃から安曇野の風景を描き始め、同54年「安曇野田植え」が長野県信濃美術館に買上げられたほか、同58年には立軌展35周年記念展出品作「安曇野春風」で第7回長谷川仁賞を受賞、同60年にその受賞記念展が銀座日動画廊で開かれた。また、平成2年3月、東京セントラル美術館で「日本の叙情詩 山下大五郎回顧展」が開かれ、萬鉄五郎の影響の認められる初期の作品から、日本の風景にとりくんだ長い画業が跡づけられた。その画風は、当初から構成力やマチエールへのこだわりを見せ、実景写生から離れた知的な制作態度をうかがわせるが、安曇野風景に至って、従来の試みが融合した清らかでみずみずしい画境が開かれることとなった。昭和62年『山下大五郎画集』(日動出版)が刊行されている。
立軌展出品歴
第1回(昭和24年)「収容所にて」「虜囚」他、2回「死(或記録)」「夜」「少年と花」、3回「少年」「少女」「姉と弟」、4回「庭」「開懇地風景」「少女」「少年」「女」、5回「工場の裏」「停車場の道」「本を見る子」「海水着のN子」「おほり端」「にしんの静物」「静物」、6回「静物」他、7回(同30年)「阿波の町」「港の水門」「とうがんの静物」「はすの実の静物」「栗のある静物」「鉄塔の風景」、8回「失調」「帰ってきた人」「ある静物」「街頭にて」、9回「堀割」「風景(A)」「風景(B)」「静物」、10回「がけ上の家」「線路の風景」「鉄塔の風景」「公園の入口」、11回「新開地風景(A)」「新開地風景(B)」「新開地風景(C)」「花」、12回(同35年)「長崎の家」「長崎の教会」「長崎の丘」「砂丘(鳥取)」「佐多岬」「桜島」、13回「長崎の屋根」「長崎の寺(A)」「畠」「砂丘」「長崎の寺(B)」、14回「箱根残雪」「麦の岡」「田園風景」、15回「紅葉」「高原」「高原の道」、16回「湖畔残雪」「田圃の風景」「麦秋の丘」、17回(同40年)「田」「砂丘」「静物」、18回「漁師の家」「漁村」「子浦の家」、19回「洛北残雪」「早春農家」「洛北花背陽光」「洛北の春」、20回「丹波秋色」「山村」「椿」「さざんか」「水仙」「飛鳥いかずちの丘」、21回「温井の村」「山村風景」「佐那河内風景」、22回(同45年)「出雲の野」「築地松」「出雲風景」、23回「築地松投影」「簸川野雨後」「雪の簸川野」、24回「出雲風景」「北国の風景」「会津の倉」「はでば」、25回「杉の里」「日光杉並木」「丹波の家」「たも木の風景」、26回「杉邑」「庄屋の家」「丹波風景」、27回(同50年)「越後の野道」「出雲の家(簸川にて)」「新潟の家」、28回「礪波初夏」「段田の風景」、29回「出雲の道」「みずたの風景」、30回「越後風景」「榛の小道」、31回「安曇野田植え」「安曇野稔り」「田毎の風景」、32回(同55年)「安曇野暮色」「芋井の段田」、33回「山つづく」「田面映ゆ」、34回「安曇野冬近し」「五月の風景」、35回「有明への道」「安曇野春風」、36回「山に新雪の頃」「高原の朝」、37回(同60年)「戸隠の春」「山田の風景」、38回「田植頃」「山新田木立」「白樺林早春」、39回「戸隠早春」「戸隠への道」、40回「山新田たうえ」、41回「山麓風景-白馬」「山新田の雨」

出 典:『日本美術年鑑』平成3年版(292-293頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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