新規矩男
西洋美術史家、東京芸術大学名誉教授、遠山記念館附属美術館館長の新規矩男は、9月17日、心筋コウソクのため埼玉県所沢市の国立西埼玉中央病院で死去した。享年70。新規矩男は、明治40年(1907)7月30日、三重県名賀郡に生まれ、三重県立上野中学校から広島陸軍幼年学校、陸軍士官学校へすすんだが、健康をそこねて陸士を中退、大正15年第一高等学校文科丙類へ入学、昭和4年3月卒業、同7年3月、東京帝国大学文学部美学美術史学科を卒業した。昭和7年4月東京美術学校講師となり、フランス語及び西洋文学を担当したが、昭和9年(1934)12月、アメリカ合衆国ニューヨーク市メトロポリタン美術館東洋部助手となり渡米、同11年(1936)12月まで滞米、勤務した。昭和12年ヨーロッパ諸国を歴遊して帰国し、同年4月東京美術学校に復帰、フランス語を担当、同13年2月講師を嘱託、同14年4月からは西洋工芸史をも担当した。昭和21年12月東京美術学校教授、同27年3月東京芸術大学美術学部教授となり、西洋美術史、西洋工芸史を講じ、昭和50年4月、定年退官した。その間、昭和34年4月~37年4月東京芸術大学附属図書館長、同40年12月~42年12月東京芸術大学美術学部長、同45年4月~47年2月東京芸術大学芸術資料館長、同47年2月~50年3月東京芸術大学附属図書館長をつとめた。
そのほか、昭和30~45年には、数回にわたって東京女子大学、名古屋大学、京都大学、東京大学の各文学部の非常勤講師として西洋美術史を講義した。これらの教育活動のほか、戦後の海外学術調査に重要な役割をはたし、昭和31~32年、同34年の二次にわたる東京大学イラク・イラン遺跡調査団(団長江上波夫)には副団長として参加、昭和41年、43年の東京芸術大学中世オリエント学術調査団(トルコ洞窟協会壁画の調査)では2次ともに団長の任をつとめた。また、昭和26年から同50年まで、美術史学会常任委員に選出され、そのうち、昭和44年6月~50年6月のあいだは同学会代表委員の任にあった。
昭和44年以降、国立西洋美術館美術品購入委員を委嘱され、昭和45年5月には財団法人遠山記念館付属美術館館長(非常勤)を嘱託され、昭和50年4月東京芸術大を定年退職してからは同美術館の常勤館長の職にあり、また武蔵野美術大学非常勤講師として西洋美術史を講義していた。没後、勲二等に叙せられ、フランス政府から勲章を贈られた。
主な著書、論文は下記のとおりである。(『』は著書、訳書。「」は論文)
「古代埃及の陶器」陶器講座 雄山閣 昭和11年
『英国芸術史』 英米文学語学講座 研究社 昭和16年7月
「ルネサンス美術発達の様式的考察」日伊文化研究第14号 昭和18年9月
『ヴァザリ美術家伝』(共訳) 青木書房 昭和18年9月
「マネと印象派」美術4月号 美術出版社 昭和21年
「クールベ作『ルー川の洞窟』について」美術研究第154号 昭和24年5月
「古代エジプトの壁画」三彩第40号 昭和25年3月
「15世紀イタリアの工芸」世界美術全集第16巻 平凡社 昭和25年8月
「モロー、カリエール、ラファエリ、コッテなど」世界美術全集第24巻 平凡社 昭和25年9月
「16世紀のイタリアの工芸」世界美術全集第17巻 平凡社 昭和26年1月
「エジプト・ティス時代の美術」世界美術全集第2巻 平凡社 昭和26年8月
「メソポタミア初期王朝時代の美術」世界美術全集第2巻 平凡社 昭和26年8月
「バビロニアの美術」世界美術全集第3巻 平凡社 昭和27年8月
「エジプトの建築」世界美術全集第4巻 平凡社 昭和28年9月
「エジプトの工芸」世界美術全集第4巻 平凡社 昭和28年9月
「メソポタミア先史大洪水文化」世界美術全集第1巻 平凡社 昭和28年7月
「エジプト先史文化」世界美術全集第1巻 平凡社 昭和28年7月
「ゴシックの工芸」世界美術全集第13巻 平凡社 昭和29年2月
「イスラムのガラス、金工、象牙」世界美術全集第10巻 平凡社 昭和29年11月
『古代世界』美術ライブラリー みすず書房 昭和31年6月
『マネ』ウィレンスキ・ローゼンスタイン著 平凡社 昭和32年12月
「東大新政の『メソポタミア初期王朝時代男子頭首像』について」東洋文化第26号 平凡社 昭和33年12月
「メソポタミア王朝時代の遺跡と文化」世界考古学大系第10巻 平凡社 昭和34年1月
「アッカド王朝、新シュメール時代の遺跡と文化」世界考古学大系第10巻 平凡社 昭和34年1月
「古典時代の工芸(ガラス工芸、金属工芸、彫玉)」世界考古学大系第14巻 平凡社 昭和35年3月
「古代エジプトの美術と工芸」世界考古学大系第13巻 平凡社 昭和35年12月
「エジプトの神殿建築」世界美術全集第5巻 平凡社 昭和35年9月
「マジョリカ陶器」世界陶磁全集第15巻 河出書房 昭和35年6月
「ピエロ・デラ・フランチェスカ」世界美術全集第30巻 角川書店 昭和36年1月
「中部イタリアの絵画」世界美術全集第30巻 角川書店 昭和36年1月
『ルネッサンスのイタリア画家』ベレンソン著(共訳) 新潮社 昭和36年6月
「工芸総説」玉川百科大辞典第18巻 誠文堂新光社 昭和36年9月
「アマルナ美術」古代史講座第12巻 学生社 昭和37年2月
「ファハリアン1タペ・スルヴァンの発掘」東京大学イラク・イラン遺跡調査団報告書4共同編著 東大東洋文化研究所 昭和38年3月
「帝国文明-バビロニア・アッシリアの文明」世界の文化・西アジア 河出書房 昭和41年4月
「古代エジプトの歴史と文化」世界の文化・エジプト 河出書房 昭和41年12月
「カイロ美術館」世界の美術館・編著 講談社 昭和45年1月
『クールベ』 平凡社 昭和46年
『ピエロ・デラ・フランチェスカ』 平凡社 昭和46年
「工芸」ブルタニカ国際百科辞典第7巻 昭和48年5月
「地中海文明の誕生」大系世界の美術第4巻 学習研究社 昭和48年8月
「古代西アジア美術の母胎」大系世界の美術第2巻 学習研究社 昭和50年4月
「メソポタミアの美術-アッシリアと新バビロニア」大系世界の美術第2巻 学習研究社 昭和50年4月
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)
例)「新規矩男」『日本美術年鑑』昭和53年版(278-279頁)
例)「新規矩男 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9747.html(閲覧日 2024-10-10)
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- ■美術界年史(彙報)
- 1960年01月 エジプト染織美術展開催
- 1959年03月 イラクイラン第2次調査団派遣
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