池原義郎

没年月日:2017/05/20
分野:, (建)
読み:いけはらよしろう

 建築家で早稲田大学名誉教授、日本芸術院会員の池原義郎は5月20日、東京都内にて肺炎のため死去した。享年89。
 1928(昭和3)年3月25日、東京都渋谷区に生まれる。51年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、同大学院工学研究科建設工学専攻に進学。53年に修了後、山下寿郎設計事務所(現、山下設計)に勤務。56年に早稲田大学理工学部建築学科今井兼次研究室助手、65年同学科専任講師、66年助教授、71年教授。1995(平成7)年の退官まで同大学にて教鞭を執るとともに、88年に株式会社池原義郎・建築設計事務所を設立し、建築家として設計活動にあたった。
 アントニオ・ガウディをわが国に紹介したことでも知られる今井兼次に師事する中でその設計思想を継承し、コンクリートと鉄を素材としながら静謐な詩的空間を生み出してきた池原は、機能的合理性への指向や建築理念に関わる言説といった方向性とは異なる近代建築の在り方を作品を通じて提示することに意識的であった。その思考が最も端的に造形されたのが、大地と建築が一体化した彫刻のような「所沢聖地霊園礼拝堂・納骨堂」(1973年竣工、日本建築学会賞(作品))であり、あるいは旋回する上昇性が強調された「早稲田大学所沢キャンパス」(1987年、日本芸術院賞)であろう。幾重にも重ねられた壁やスキップフロアといった、池原が好んで用いた建築言語は、建築に奥行きを与える要素であるとともに、視点を変え歩を進めるごとに異なる風景が立ち現れるという空間体験を喚起する仕掛けでもあった。
 その他の主な作品に、白浜中学校(1970年)、西武ライオンズ球場(1979年)、松ヶ丘の家(1986年)、酒田市美術館(1997年)、下関市地方卸売市場唐戸市場(2001年)、軽井沢プリンスショッピングプラザ・ニューイースト(2004年)などがある。
 上記以外の主な受賞歴に、88年大隈記念学術褒賞記念賞、02年瑞宝中綬章、16年早稲田大学芸術功労者。
 主な著作に『池原義郎 建築とディテール』(彰国社、1989年)、『光跡 モダニズムを開花させた建築家たち』(新建築社、1995年)など。また、作品集として、『池原義郎・作品 1970―1993』(新建築社、1994年)ほかがある。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(443頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「池原義郎」『日本美術年鑑』平成30年版(443頁)
例)「池原義郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824251.html(閲覧日 2024-04-24)

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