岡畏三郎

没年月日:2010/09/17
分野:, (学)
読み:おかいさぶろう

 美術史家の岡畏三郎は9月17日午前1時35分、老衰のため東京都世田谷区の病院で死去した。享年96。
 1914(大正3)年1月18日、演劇評論家岡鬼太郎(本名、嘉太郎)の次男として東京に生まれる。兄は洋画家の岡鹿之助。1931(昭和6)年私立麻布中学校を卒業。32年東京の都立高等学校理科乙類に入学し、35年に同校を卒業する。36年4月に東京帝国大学農学部農学科に入学し39年3月に同科を卒業。同年4月東京帝国大学文学部美学美術史学科に入学。41年12月に同科を卒業し、42年1月に財団法人国際文化振興会(現、国際交流基金)に勤務する。45年5月15日、同会を退職して美術研究所に助手として入所する。当時、同所助手であった河北倫明が応召するのに伴い、補充採用となったもの。隈元謙次郎河北倫明らとともに日本近代美術の調査研究事業に従事し、大正期の洋画と18世紀以降の浮世絵・木版画を研究対象とした。51年3月「明治末期に於ける『新傾向』に就て」(『美術研究』160号)を発表して以来、専門分野に関する著作、講演を多数行う。手堅い史料調査による作家研究を行い、日本美術の近代化の中で江戸時代までの造形の蓄積を表現に取り入れた作家たちを積極的に評価した。戦後、美術研究所は東京国立文化財研究所となったが、同所美術部第二研究室長を長く務め、72年4月から同部長となった。76年4月1日、同所を退官。76年から86年まで群馬県立近代美術館館長を務めた。主な著作に以下のようなものがある。

「明治末期に於ける「新傾向」に就て」(『美術研究』160 1951年3月) 
「フュウザン会」(『美術研究』185 1956年3月) 
「大正・昭和期の洋画史」(『日本文化史大系12』 1957年9月) 
『広重』(平凡社、1957年6月) 
『近代の洋画人・岡田三郎助』(中央公論、1959年) 
「近代洋画の展開と版画芸術の復興」(『世界名画全集』23、平凡社、1960年1月) 
「大正期洋画史」(『世界美術全集』11、角川書店、1961年9月) 
「奥村・石川派を中心とする美人画の開拓」(『日本版画全集』2、講談社、1961年12月) 
「小出楢重・岸田劉生」(『世界名画全集続編』5(共著)、平凡社、1962年3月) 
「橋口五葉伝」(『浮世絵芸術』2 1962年8月) 
「小出楢重の美術学校時代と初期作品」(『美術研究』223 1963年3月) 
「大正期版画」(『浮世絵芸術』4 1963年12月) 
「小出楢重の初期作品について」(『美術研究』228 1964年3月) 
『浮世絵(平木コレクション)』編集・解説(毎日新聞社、1964-66年) 
小絲源太郎年譜」『小絲源太郎』(美術出版社、1965年10月) 
『広重(Ⅱ)』(山田書院、1967年7月) 
『北斎(Ⅱ)』(山田書院、1967年10月) 
「明治・大正・昭和の版画」(『現代の眼』151 1967年6月) 
「岸田劉生と小出楢重」(『近代洋画名作展図録』、中日新聞社、1967年10月) 
「近代美術年譜」『現代の日本画(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)』(三彩社、1967年11月・68年1月・68年6月) 
「山下りん筆『十二大祭図』について」(『美術研究』258 1969年3月) 
「橋口五葉と大正版画」(『三彩』243 1969年6月) 
「末期美人画」(『浮世絵』、日本経済新聞社、1969年3月) 
「近代洋画の抬頭と展開」(『日本絵画館・明治』、講談社、1970年1月) 
『浮世絵』(1-12巻)(共著)(毎日新聞社、1970年1月-71年3月) 
「創作版画の抬頭」(『日本絵画館・大正』、講談社、1971年6月) 
「小出楢重<近代日本美術家の文献紹介>」(『現代の眼』201 1971年11月) 
『風景版画』(至文堂、1972年1月) 
「山下りんの伝記と作品」(『美術研究』279 1972年1月) 
『在外秘宝・清長』(共著)(学習研究社、1972年7月) 
「岸田劉生」(『現代日本美術全集』、集英社、1972年12月) 
藤島武二』(日本の名画31)(講談社、1973年7月) 
『歌川広重』(日本の名画12)(講談社、1974年1月) 
『北斎読み本挿絵集成』2巻・5巻(共著)(美術出版社、1973年3月・11月) 
「フュウザン会について」(『絵』126 日動出版 1974年8月) 
『浮世絵版画大系 8北斎』(集英社、1974年11月) 
「草土社の創立について」(『美術研究』297 1975年3月) 
「内国勧業博覧会について」(『明治美術基礎資料集』、東京国立文化財研究所、1975年3月) 
『高橋コレクション』(第1巻・第2巻・第5巻)(共同編集、解説)(中央公論社、1975年6-12月) 
『山下りん-黎明期の聖像画家』(共著)(鹿島出版会、1976年12月) 
『原色浮世絵大百科事典』(大修館書店、1981年) 
『劉生日記』1-4(岩波書店、1984年) 

出 典:『日本美術年鑑』平成23年版(448-449頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「岡畏三郎」『日本美術年鑑』平成23年版(448-449頁)
例)「岡畏三郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28510.html(閲覧日 2024-03-19)

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