乾由明

没年月日:2017/07/17
分野:, (学)
読み:いぬいよしあき

 近現代陶芸や西洋近代美術史の研究者・評論家として活躍し、京都大学・金沢美術工芸大学名誉教授を務めた乾由明は7月17日肺炎のため死去した。享年89。
 1927(昭和2)年8月26日大阪市に生まれる。生家はかつて大阪市内や兵庫県・甲陽園に店舗を構えた高級料亭「はり半」で、谷崎潤一郎の「細雪」にも登場する料亭であり、美術品や古美術に囲まれて育った。51年京都大学文学部西洋近代美術史専攻卒業後、同大学院美術史専攻を修了した。前京都国立近代美術館長で美術評論家の今泉篤男のもと、63年開館した国立近代美術館京都分館(現、京都国立近代美術館)の学芸員として勤務、その後母校である京都大学の教授となる。フランスを中心とする西洋近代美術の研究・紹介に務める一方で、日本の近・現代美術について活発な評論活動を繰り広げ、現代美術批評の最前線に立つ。また、現代陶芸研究者としても活躍、「前衛」、「オブジェ」などの新しい陶芸分野に注目した。富本憲吉、楠部弥弌などの日本の陶芸家のみならず、バーナード・リーチ、ルーシー・リーやハンス・コパーなど海外の陶芸家とも親交を深めた。
 1989(平成元)年第10回小山冨士夫記念賞受賞。92年には、『日本の陶磁 現代篇』(中央公論社)の責任編集者として、明治時代から現代に至る現代日本の陶芸を代表する名匠を選出。第1巻では、板谷波山富本憲吉北大路魯山人、楠部弥弌、加藤土師萌、六代清水六兵衛、近藤悠三を紹介した。2003年、陶芸界の巨匠重要無形文化財保持者(通称「人間国宝」)の集大成として、『人間国宝の技と美 陶芸名品集成(1) 陶器』(講談社)を平山郁夫と共に監修した。陶器編、磁器編、併せて計3巻を刊行。
 兵庫陶芸美術館設立にあたり基本構想・計画策定委員を務め、05年の開館と共に初代館長に就任。古陶磁のみならず、現代陶芸家の展覧会も積極的に開催。バーナード・リーチ展や三代徳田八十吉展などを企画。
 編著作に『抽象絵画』(保育社、1965年)、『近代の美術5浅井忠』(至文堂、1971年)、『世界の名画 6 モネと印象派』(中央公論社、1972年)、『日本の名画 20須田国太郎』(中央公論社、1976年)、『巨匠の名画 2 ルノワール』(学習研究社、1976年)、『日本のやきもの 現代の巨匠4 河井寛次郎』(講談社、1978年)、『現代日本陶芸全集 やきものの美 3 富本憲吉』(集英社、1980年)、『現代陶芸の系譜』(用美社、1991年)、『眼の論理 現代美術の地平から』(講談社、1991年)、『古備前を超えて 森陶岳』(東方出版、2000年)、『ルーシー・リー&ハンス・コパー 二十世紀陶芸の静かなる革新』(六耀社、2013年)他多数。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(449頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「乾由明」『日本美術年鑑』平成30年版(449頁)
例)「乾由明 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824291.html(閲覧日 2024-04-25)

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