頼富本宏

没年月日:2015/03/30
分野:, (学)
読み:よりとみほんこう

 密教学・密教美術研究を専門とし、ことにインド・チベット・中国の密教遺跡と遺品の調査研究に数多くの業績を残した頼富本宏は3月30日午後9時31分 膵臓がんのため死去した。享年69。翌日、真言宗より「大僧正」を追贈。葬儀は近親者で密葬を執り行い、本葬を4月29日に神戸市内の本願寺神戸別院で営んだ。
 1945(昭和20)年4月14日、本信・房子の長男として香川県に大川郡大川町に生まれる。幼名は本宏(もとひろ)。神戸・實相寺開山で第一世住職であった父を師僧とした。59年7月、同寺において得度。64年3月兵庫県立神戸高等学校を卒業後、4月より京都大学文学部に入学し勉学に勤しむ傍ら、5月には東寺真言宗より度牒を得る。66年8月には淡路・万福寺にて4ヶ月に及んだ四度加行を成満する。68年3月、京都大学文学部(仏教学専攻)を卒業、4月より同大学大学院文学研究科修士課程(仏教学)に進学するとともに、12月21日には京都・醍醐寺に於いて伝法灌頂入壇(三宝院流憲深方)を果たす。70年修士課程修了のち、そのまま同大学大学院博士課程(仏教学)に進学。73年3月単位取得満期退学。4月より種智院大学仏教学部専任講師となる。76年4月同学部助教授に就任するとともに、日本密教学会理事となる。この頃より本格的に密教美術に及んだ論文を執筆することを心がけ、当初は「ラマ教」関係に留まったが、80年代以降、日本を見据えての東アジアにおける密教の伝播・受容に関する研究へと視野を拡大してゆく。82年7月インドに現存する密教遺跡・遺品の研究で朝日学術奨励賞を受賞。10月より密教図像学会常任委員となる。83年10月に實相寺住職(第二世)を継職。87年12月より仏教史学会評議員となる。翌88年3月京都大学より文学博士の学位を得る。1992(平成4)年4月種智院大学仏教学部長に就任するとともに、日本仏教学会理事、日本印度学仏教学会理事となる。95年10月密教学芸賞を受賞。97年10月密教図像学会副会長となる。98年3月種智院大学の職を辞し、4月より国際日本文化研究センター研究部教授に就任するとともに、総合研究大学院大学文化科学研究科教授、種智院大学の客員教授を兼務する(いずれも2002年3月まで)。99年4月には国際日本文化研究センター評議員となる。2002年4月種智院大学第十代学長に就任、日本私立大学協会評議員となる。04年4月より人間文化研究機構国際日本文化研究センター運営委員となる。08年「権僧正」補任。10年3月に種智院大学長を退き、同大学の名誉教授の称号を得る。この間、京都所在の大学を中心に非常勤講師(集中も含む)として関西大学(1976~78、95~97年)、京都大学(1979~81、90~92年)、大谷大学(1979~81、91~93、00~01年)、龍谷大学(1994~2001年)、同短期大学部(1987~99年)、佛教大学(1992~93年)、岡山大学(同)、金沢大学(1993~94年)などに出講した。
 頼富は文字通り密教学僧であり、インドから日本に及ぶアジアの密教文化・密教美術の研究としては泰斗的な存在であった。その性格は非常に温厚・篤実であり、腰の低い人柄は諸方面より慕われ人望が厚かった。生涯の業績において特筆されるのは佐和隆研(1983年没)の遺志を継ぎ、以来、約30年にわたって密教図像学会の発展に尽力し、佐和隆研博士学術奨励賞の維持に努め、門戸を開いて後身研究者の育成を目指すとともに、同学会の行く末・発展に最期まで腐心した点にある。著書・論文は仏教哲学、密教文化に及んで専門的なものから一般啓蒙書まで多岐に及ぶが、美術に関わるものに限定して単独で発表した代表的なものをあげるならば、単著に『庶民のほとけ―観音・地蔵・不動―』(日本放送協会、1984年)、『マンダラの仏たち』(東京美術、1985年)、『密教仏の研究』(法蔵館、1990年)、『曼荼羅の鑑賞基礎知識』(至文堂、1991年)、『マンダラ講話』(朱鷺書房、1996年)、『密教とマンダラ(NHKライブラリー)』(NHK出版、2003年)、『すぐわかるマンダラの仏たち』(東京美術、2004年)がある。主要論文については、『頼富本宏博士還暦記念論文集 マンダラの諸相と文化』上(法蔵館、2005年)所載の「頼富本宏博士略歴・業績目録」を参照されたい。このほかNHKメディアを活用し、市民大学「密教とマンダラ」(1963年放送)、人間講座「空海―平安のマルチ文化人―」(2015年)、BS夢の美術館「アジア仏の美100選」(2017年)等に講師として出演し知名度を上げるとともに、ともすれば深淵難解と敬遠されがちな密教教学と文化をわかりやすく一般に説いた。

出 典:『日本美術年鑑』平成28年版(535頁)
登録日:2018年10月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「頼富本宏」『日本美術年鑑』平成28年版(535頁)
例)「頼富本宏 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/809026.html(閲覧日 2024-07-23)

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