砂守勝巳
写真家の砂守勝巳は6月23日、胃がんのため東京都内の病院で死去した。享年57。1951(昭和26)年9月15日、沖縄本島浦添に生まれる。57年フィリピン出身で沖縄駐留米軍基地の軍属であった父が任を解かれ、母の故郷奄美大島に移り少年時代を送る。8歳になる直前に父は妻子をおいて帰国。15歳で母が死去、大阪に移り18歳でボクシングを始める。69年から71年までプロボクサーとして活動。引退前から現像所に勤務していたことをきっかけに写真に関心を持ち、74年大阪写真専門学院に入学。75年に卒業し写真家として活動を始める。82年に大阪、釜ヶ崎のドキュメントによる個展「露地流転」(キヤノンサロン銀座、大阪、広島他)を開催、84年同じく大阪・釜ヶ崎に取材した「大阪流転」で『プレイボーイ』誌(集英社)主催の第3回プレイボーイ・ドキュメントファイル大賞奨励賞を受賞。1889(平成元)年に写真集『カマ・ティダ―大阪西成』(IPC)を出版。86年に撮影の仕事で29年ぶりに沖縄を訪れたことをきっかけに、たびたび沖縄に撮影のため通うようになり、沖縄で出会った混血のパンク・ロッカーや自身の生い立ち、父との再会などについてつづった写文集『オキナワン・シャウト』(筑摩書房、1992年、のち『沖縄シャウト』と改題、講談社文庫、2000年)を出版。93年の個展「漂う島とまる水」(銀座および大阪ニコンサロン、奄美文化センター他)で発表された作品にもとづく写真集『漂う島とまる水』(クレオ、1995年)は、出生地であり幼少期を過ごした沖縄、母の出身地で少年時代を過ごした奄美、そして生き別れとなった父を訪ねたフィリピンという島をめぐる私的な旅を主題に、島嶼の自然や暮らし、現代史に翻弄された沖縄の現実へのまなざしなど重層的な構造を持つ作品として評価され、同作により96年第15回土門拳賞および第46回日本写真協会賞新人賞を受賞した。その他の著作に写文集『オキナワ紀聞』(双葉社、1998年、のち『沖縄ストーリーズ』と改題、増補、ソニーマガジンズ、2006年)、写真週刊誌時代の経験などをつづった『スキャンダルはお好き?』(毎日新聞社、1999年)がある。
出 典:『日本美術年鑑』平成22年版(471頁)登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)
例)「砂守勝巳」『日本美術年鑑』平成22年版(471頁)
例)「砂守勝巳 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28461.html(閲覧日 2024-12-05)