飯田善国

没年月日:2006/04/19
分野:, (彫)
読み:いいだよしくに

 彫刻家飯田善国は4月19日、心不全のため、滞在先であった長野県松本市内の病院で死去した。享年82。1923(大正12)年7月10日、現在の栃木県足利市小曽根町に生まれる。1943(昭和18)年4月、慶応義塾高等部に入学、同年12月応召。46年1月、中国より復員。同年9月、慶応義塾大学に復学して文学部に編入、同学部ではじめ国文学、ついで美学を専攻し、折口信夫、池田弥三郎、西脇順三郎に学んだ。49年に同大学を卒業後、東京芸術大学美術学部油絵科に入学し、梅原龍三郎教室に学んだ。卒業後の53年7月、丸善画廊(東京日本橋)で初個展開催。その案内状には、梅原龍三郎が一文を寄せた。55年、河原温、池田龍男、石井茂雄等と「制作者懇談会」を結成。56年、渡欧。ローマ滞在中に絵画から彫刻を志すようになり、彫刻家ファッツィーニに師事。57年ヴィーンに移り、銅版画を学ぶ。その後、ヴェネツィア、アイスランドのレイキャビック、60年10月、ミュンヘンで彫刻と版画による個展開催。同地で開催されたヘンリー・ムーアの彫刻展に感銘を受ける。61年、ヴィーンのクラージュ劇場で「KATAKI」の主役を演じ、同地で話題となる。一方同年から、鉄、木を素材に本格的に抽象彫刻作品の制作を始める。ベルリンに移り、ヴィーンとの往復を繰り返しながら制作をつづけ、またオーストリア人カタリーナ・バイテルと結婚。67年11月、帰国。68年、第1回神戸須磨離宮公園現代彫刻展で「ミラー・オン・ザ・コンストラクション」を出品、大賞受賞。69年9月、前年より運営委員として国内外を奔走して準備にあたった「国際鉄鋼彫刻シンポジウム」(大阪)が開催される。72年、西脇順三郎との共同制作で詩画集『クロマトポイエマ』を制作、この作品をもとに南天子画廊(東京)で個展開催。この共同制作を契機にアルファベットの言葉と色彩を組み合わせた表現を試みるようになる。70年代末頃より、ステンレスの立体とナイロンのカラーロープを組み合わせた立体作品の制作が始まる。また、個展開催とともに各地の野外彫刻展にも積極的に出品し、あわせて、89年の彫刻噴水「シーソー(虹と水の広場)」(東京都町田市芹ヶ谷公園)など公共空間での彫刻作品の制作も多くすすめられた。88年、三重県立美術館、目黒区美術館、京都国立近代美術館を巡回した回顧展「つながれた形の間に―飯田善国展」を開催。1993(平成5)年7月、目黒区美術館で「飯田善国―画家としてのプロフィール展」開催。94年12月、慶応義塾大学(三田キャンパス、北新館ノグチ・ルーム)で「光の糸が見える―飯田善国展」開催。97年12月、神奈川県立近代美術館で「連続する出会い 飯田善国展」開催。さらに没後の2006年9月から翌年6月にかけて、町田市立国際版画美術館、足利市立美術館にて「飯田善国―版画と彫刻」展が開催された。飯田の創作活動は、彫刻にとどまらず、絵画、版画、詩というように多岐にわたるが、いずれもが視覚的な造形表現と言語表現とが分かちがたく結びついており、その点から観念性を強める現代美術において独自の位置をしめている。なお、飯田には版画集、作品集、彫刻論、エッセイ、詩集等の刊行も多くあり、その主要なものを刊行年順にあげると、下記の通りである。

『見えない彫刻』(小沢書店、1977年)
『震える空間』(小沢書店、1981年)
『ラッセル広場の空』(小沢書店、1982年)
『20世紀思想家文庫5 ピカソ』(岩波書店、1983年)
詩集『見知らぬ町で』(思潮社、1983年)
作品集『飯田善国 ミラーモビール』(美術出版社、1987年)
『彫刻家 創造への出発』(岩波書店(岩波文庫)、1991年)
版画集『M.M.曲面シンドローム』(ノマルエディション、1992年)
版画集『うしなわれないことば』(ギャラリーAPA、1994年)
『彫刻の思想』(小沢書店、1995年)
『妖精の距離 カントリーボーイ年代記』(小沢書店、1997年)
版画集『SHADOW OF THE SKY / VOICE OF THE EARTH』(ギャラリーAPA、1998年)
作品集『飯田善國・絵画集』(銀の鈴社、1999年)
詩集『Gahlwayの女たち』(思潮社、2001年)

出 典:『日本美術年鑑』平成19年版(268-369頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「飯田善国」『日本美術年鑑』平成19年版(268-369頁)
例)「飯田善国 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28362.html(閲覧日 2024-04-20)

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