秀島由己男

没年月日:2018/10/03
分野:, (版)
読み:ひでしまゆきお

 銅版画家の秀島由己男は、10月3日に死去した。享年84。
 1934(昭和9)年4月15日、熊本県水俣市に生まれる。本名秀嶋幸雄。50年、水俣市立水俣第一中学校を卒業。卒業後、中学校の美術教師長野勇が主宰する画塾に通いはじめ水彩画の指導を受け、同画塾では後に歌人、小説家となる石牟礼道子(1927-2018)を知る。また卒業した中学校の事務補佐員として働きはじめ、勤務の傍ら、ペン画を描きはじめる。
 53年、第1回熊本県水彩画展に「静物」を出品、グランプリを受賞。同年、第8回熊本県美術協会展に初入選。54年、新日本窒素肥料水俣工場の絵画クラブの市民会員として加入、ここで海老原美術研究所(海老原喜之助主宰)から派遣されていた講師から油彩画の手ほどきを受ける。同年、結核と診断され入院、入院中に短歌を学ぶ。57年、東京より帰郷した浜田知明を紹介され、自作のペン画の助言を受ける。61年、この年に銅版画制作を試みた。
 63年11月、第18回熊日総合美術展に「霊歌A」等3点のペン画を出品、神奈川県立近代美術館「K氏賞」受賞、同美術館の買い上げとなる。また、同展の審査員だった海老原喜之助を知り、師事する。65年、水俣市から熊本市に転居。65年11月、第20回熊日総合美術展にペン画3点を出品、そのなかの「祖国の霊」で熊日賞受賞、神奈川県立近代美術館の買い上げとなる。同展の審査員であり、同美術館長であった土方定一を介して、翌年3月、南天子画廊で第1回「秀島由己男個展-ペンに依る黒の歌」を開催。67年、浜田知明より銅版画プレス機を譲り受け、本格的に銅版画制作をはじめる。74年4月、『詩画集・彼岸花』(詩、石牟礼道子)、『版画集・わらべ唄』を南天子画廊から出版、また同月、浜田知明とともに銅版画4点を制作した『土方定一童話集 カレバラス国の名高きかの物語』(歴程社)出版。75年、第1回ユベスキュラ・グラフィカ・クリエイティヴァ国際版画トリエンナーレ(フィンランド)に『版画集・わらべ唄』を出品、ディプロマ賞受賞。80年代以降、国内外での評価の高まりとともに、熊本県立美術館、東京都美術館等の各地の美術館での企画展に出品されるようになる。84年東京に移住するが、なじめずに87年に帰郷。85年、『詩画集 静物考』(詩、高橋睦郎)、1989(平成元)年、『版画集 舊約聖書:詩編より(霊歌)』(選文、高橋睦郎)を南天子画廊から出版。91年10月から11月、熊本市と水俣市にて「秀島由己男自選展」開催。94年4月から翌年3月まで、『熊本日日新聞』に月1回自身の半生をつづったエッセイ「風の舟」を連載。95年1月、大川美術館(群馬県桐生市)にて「魂の叫び 秀島由己男展」開催、ペン画、銅版画等103点出品。97年、『詩画集 われらにさきかけてきたりしもの』(詩、高橋睦郎)を南天子画廊から出版。石牟礼道子の新聞連載小説「春の城」(『熊本日日新聞』1998年4月17日-99年3月1日連載。他に『高知新聞』等6紙に同時に連載。)の挿絵を担当し、300点をこえる作品(内、銅版画239点)を提供した。99年4月、神奈川県立近代美術館別館にて「秀島由己男展」開催、銅版画、ペン画116点出品。
 2000年以降、各地の美術館等で回顧展が開催され、主要なものは下記の通りである。
 2000年9月、「魂の詩-秀島由己男展」、熊本県立美術館、銅版画等211点出品。
 2003年3月「秀島由己男展」、カスヤの森現代美術館(横須賀市)
 同年7月「秀島由己男-心の風景」展、八代市立博物館未来の森ミュージアム
 2009年8月、「新世界へ…秀島由己男展」、東御市梅野記念絵画館、テンペラ画等45点を出品。
 2014年2月、「秀島由己男 創造と探究の生者展」、熊本市現代美術館、作品とともに自身が収集してきたアート・コレクションも初公開された。
 2017年2月、コレクション再発見「秀島由己男展」、福島県立美術館
 2017年9月、「浜田知明・秀島由己男版画展」、大川美術館、銅版画等62点出品。
 なお没後の2019(令和元)年7月、島田美術館(熊本市)にて「秀島由己男展」が開催され追悼された。
 緻密な表現による銅版画、ペン画等、「魂の救済」、「魂の叫び」等と評され、孤独感におおわれた幻想性と文学性に富んだ作品を数多く残したが、秀島にとって創作そのものが鎮魂の祈りであったといえるだろう。時流にとらわれることのない、孤高の版画家だった。

出 典:『日本美術年鑑』令和元年版(523-524頁)
登録日:2022年08月16日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「秀島由己男」『日本美術年鑑』令和元年版(523-524頁)
例)「秀島由己男 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/995816.html(閲覧日 2024-07-20)

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