石田尚豊

没年月日:2016/07/29
分野:, (学)
読み:いしだひさとよ

 美術史家である石田尚豊は、7月29日死去した。享年93。
 1922(大正11)年8月9日東京都上根岸に生まれる。1929(昭和4)年4月東京都世田谷区深沢尋常小学校入学、35年4月京華中学校入学、41年4月都立高等学校文科乙類入学。45年4月東京大学文学部国史学科に入学し、50年3月卒業した。同年4月に東京大学大学院に進み、52年3月に満期修了して、同年4月、東京国立博物館の資料課資料室員となった。64年7月東京国立博物館に法隆寺宝物館が開館し、資料課内に置かれた法隆寺宝物掛の主任となった。67年5月資料課資料室長兼法隆寺宝物掛主任となり、法隆寺宝物室の新設を目指した。70年4月資料課内に法隆寺宝物室が新設されたが、彼は、70年4月に国立歴史民俗博物館(1983年開館)の設立準備のため文化庁に出向し、文化庁美術工芸課文化財調査官(絵画部門)兼管理課長補佐となった。この間、71年に基本構想委員会が設置され、72年に基本構想案がまとめられた。それに基づいて、展示準備委員会及び展示計画委員会が設置され、資料調査と資料収集が開始された。
 72年11月、再び東京国立博物館に戻り、普及課主任調査官、74年4月資料課資料調査室長。76年7月資料課長となった。この頃に、資料館(1984年2月開館)設立準備に携わった。75年11月『曼陀羅の研究』(東京美術)を刊行し、78年1月、同著によって、東京大学から文学博士を授与され、また、78年3月、同著により、日本学士院賞を受賞した。81年3月東京国立博物館を退職し、同年4月青山学院大学文学部史学科教授となった。88年2月『日本美術史論集―その構造的把握―』(中央公論美術出版)を刊行、同年11月、同著により、青山学院学術褒賞を受賞した。1991(平成3)年3月青山学院大学文学部史学科教授を退職し、同年4月聖徳大学人文学部日本文化学科教授となり、2001年4月に同職を退職した。92年11月勲三等瑞宝章を授与されている。常勤職以外に、明治大学、中央大学、東京大学、学習院大学、東京女子大学、聖徳大学にて非常勤講師をつとめ、弘前大学、東北大学、九州大学、高野山大学にて集中講義を行った。
 彼の研究対象は、玉虫厨子、華厳経美術、密教美術、浄土教美術、重源、洛中洛外図屏風、職人絵と多岐にわたり、どれを対象としても、膨大な史料を読み込み、深く思考して、緻密に論理を構成する点が共通する。また、未解決の問題があると、先学や専門家に面謁し、その教えを真摯に乞うことが少なからずあったことは、彼の『日本美術史論集』の「あとがき」などに明らかである。
 彼の経歴と業績については、「石田尚豊先生年譜と業績」(『青山史学』12 今野國雄教授・石田尚豊教授退任記念号、1991年)に詳しい。それ以降の著作、論文、講演等は、以下の通りである。
【著作・監修・編著】
『日本史写真集 続(文化編)』(土田直鎮と共同監修、山川出版社、1995年)、『聖徳太子と玉虫厨子―現代に問う飛鳥仏教―』(東京美術、1998年)、『聖徳太子事典』(編集代表、柏書房、1997年)、『ブッダ―大いなる旅路<3> 救いの思想・大乗仏教(NHKスペシャル)』(NHK「ブッダ」プロジェクトと共著、NHK出版、1998年)、『空海の帰結―現象学的史学―』(中央公論美術出版、2004年)。
【論文・講演記録・随筆】
「ともしび」(『青山史学』13、1992年)、「『MUSEUM』の回想」(『MUSEUM』500、1992年)、「曼荼羅研究の現代的意義」(講演、『愛知学院大学人間文化研究所紀要』8、1993年)、「『絵仏師の時代―研究篇・資料篇(全2)』平田寛」(『日本歴史』566、1995年)、「玉虫厨子は語る」(公開講演、『鶴見大学佛教文化研究所紀要』2、1997年)、「玉虫厨子をめぐって―『文献の学』と『物の学』」(『史学雑誌』107―12、1998年)、「飛鳥の曙―小墾田新宮殿」(『学燈』95―5、1998年)、「聖徳太子の実像を求めて―アジア的視野で考察する」(『大法輪』(上)68―9、(下)68―10、2001年)、「聖徳太子とその時代―太子を貫く思想 含 聖徳太子略年表」(『大法輪』68―12、2001年)、「新しい歴史学を求めて―現象学的史学」(『文化史学』59、2003年)。

出 典:『日本美術年鑑』平成29年版(548-549頁)
登録日:2019年10月17日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「石田尚豊」『日本美術年鑑』平成29年版(548-549頁)
例)「石田尚豊 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/818781.html(閲覧日 2024-04-27)

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