渡辺克巳

没年月日:2006/01/29
分野:, (写)
読み:わたなべかつみ

 写真家の渡辺克巳は、1月29日肺炎のため東京都狛江市の病院で死去した。享年64。1941(昭和16)年10月17日岩手県盛岡市に生まれる。61年岩手県立盛岡第一高等学校(定時制)を卒業。57年から61年まで毎日新聞社盛岡支局で事務補助員を務め、基本的な写真技術を習得。62年上京し、東條会館写真部に勤務(67年退社)。65年、夜の盛り場をまわり、三枚一組二百円でポートレイトの撮影の注文を受け、翌日届ける「流しの写真屋」を始める。そうして撮りためた写真を『カメラ毎日』1973年6月号の公募欄「Album’73」に「新宿・歌舞伎町」と題して発表、新進の写真家として注目され、この年の「Album賞」に選ばれる。同年、写真集『新宿群盗伝66/73』(薔薇画報社)を刊行。また74年には初の個展「初覗夜大伏魔殿」(シミズ画廊、東京・荻窪)を開催、「15人の写真家」展(東京国立近代美術館)に参加した。70年代に入って、時代の変化により、流しの写真屋としての営業が成り立ちにくくなった後も、写真館の経営(76年から81年まで)などのかたわら新宿、歌舞伎町界隈に通い、街とそこに集まる人々を撮影し続けた。それらの作品は、『新宿群盗伝伝』(晩聲社、1982年)、『ディスコロジー』(晩聲社、1982年)、『新宿 1965―97』(新潮社、1997年)、『新宿グランドパレス』(新潮社、1998年)、『Hot Dog―新宿1999―2000』(ワイズ出版、2001年)などの写真集や、「真夜中のストリートエンジェル」(銀座ニコンサロン、1980年)、「新宿群盗伝伝」(銀座および新宿ニコンサロン、1982年)、「ごちゃまぜ天国」(コニカプラザ、1993年)、「LIVE」(プレイスM、2002年)などの個展で発表された。1998(平成10)年日本写真協会賞年度賞を受賞(前年の写真集『新宿 1965―97』に対して)。2006年個展「Gangs of Kabukicho」(Andrew Roth、アメリカ、ニューヨーク)開催、同題の写真集がPPP Editionsから刊行された。08年には回顧展「流しの写真屋渡辺克巳1965―2005」(ワタリウム美術館)が開催された。

出 典:『日本美術年鑑』平成19年版(365頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「渡辺克巳」『日本美術年鑑』平成19年版(365頁)
例)「渡辺克巳 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28356.html(閲覧日 2024-04-25)

外部サイトを探す
to page top