嶋崎丞

没年月日:2019/12/19
分野:, (学)
読み:しまさきすすむ

 石川県立美術館・同七尾美術館長の嶋崎丞は12月19日、虚血性心疾患のため死去した。享年87。
 1932(昭和7)年4月17日、石川県小松市に生まれる。57年立教大学文学部史学科卒業。59年九州大学大学院文学研究科国史学専攻修士課程修了。59年7月に石川県総務部の石川県美術館開設準備室に入り、同年10月の開館を経て翌年7月より学芸員として勤務、74年同館副館長となる。また83年に開館した現在の県立美術館の建設に携わり、1991(平成3)年から28年にわたり同館長を務めた。
 専門は日本工芸史、日本文化史。金沢の出身である建築家の谷口吉郎、漆工家の松田権六の薫陶を受け、加賀藩の時代より伝わる美術工芸を育んだ文化的土壌の掘り起こしに努めた。とくに九谷焼について谷口の助言により古九谷を研究し、76年には古九谷が素地の大半を九州の有田から移入し、色絵技術は初期の京焼の影響が強いとする素地移入説を提唱、古九谷の発祥をめぐる論争に一石を投じた。また同じく谷口の示唆を受け、俵屋宗達の流れを汲み金沢で活動するも不明な点の多かった宗雪と相説について研究、その成果を75年に石川県美術館で開催した「宗雪・相説展」で公にした。
 石川県美術館、石川県立美術館に奉職する一方で、その芸術文化全般に関する知識が高く評価され、石川県や金沢市の歴史・文化関係の各種委員、文化庁文化財保護審議会専門委員等を歴任、全国美術館会議や日本博物館協会の理事も務めた。一方で石川県内の大学で博物館学を講義し後進を育成するなど、生涯を通して美術館・博物館の発展のために尽力。さらに石川県の各種工芸技術関連施設において指導にあたり、伝統文化の継承、発展に貢献した。
 主な著書は以下の通り。
『日本のやきもの 18 九谷』(講談社、1975年)
『日本陶磁全集 26 古九谷』(中央公論社、1976年)
『日本の陶磁 13 九谷』(保育社カラーブックス、1979年)
『加賀・能登の伝統工芸』(監修解説、主婦の友社、1983年)
 亡くなる直前の2019(令和元)年10月17日から没後の12月31日にかけて『北國新聞』で「美術王国の軌跡」と題して、六十年にわたる美術館勤務についての聞き書きが連載される。また『石川県立美術館紀要』25・26(2021・22年)には、西田孝司の編による年譜と著作目録が収載されている。

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(504-505頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「嶋崎丞」『日本美術年鑑』令和2年版(504-505頁)
例)「嶋崎丞 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2041121.html(閲覧日 2024-04-29)

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