和田誠

没年月日:2019/10/07
分野:, (デ)
読み:わだまこと

 グラフィックデザイナー・イラストレーターの和田誠は10月7日、肺炎のため死去した。享年83。
 1936(昭和11)年4月10日、大阪府、大阪生まれ。幼少期より虚弱体質で家の中で絵を描くことを好んでいた。小学4年生の頃、担任を通じて政治漫画家の清水崑の作品を知り、似顔絵を描くようになる。53年、高校2年の時に国立近代美術館(現、東京国立近代美術館)で開催された「世界のポスター」展に強く感銘を受け、それをきっかけでデザイナーを志す。55年、多摩美術大学図案科に入学。同年に応募した興和新薬が行った蛙のイラストの公募で一等賞を獲得。同年に宇野亜喜良も同賞を受賞している。57年には、ポスター「夜のマルグリット」で日宣美賞を受賞。59年に大学を卒業後、ライトパブリシティに入社。その直後に煙草ハイライトのパッケージコンペで勝利し、一躍脚光を浴びる。キャノンや煙草ピースといったメーカーの広告デザインを手がける一方で、自身の絵を用いた装丁やポスター制作を積極的に行った。装丁を初めて手掛けたのは寺山修司、湯川れいこ共編『ジャズを楽しむ本』(久保書店、1961年)である。翌年には、谷川俊太郎著『アダムとイブの対話』(実業之日本社、1962年)の装丁を担当した。文章と絵を手がけた初めての絵本は『ぬすまれた月』(岩崎書店、1963年)である。ポスターでは、草月会館で開催されていた「草月ミュージック・イン」の告知ポスターを手掛けていたほか、大学生の頃から付き合いのあった印刷会社サイトウプロセスで刷っていた新日活名画座のポスターのためのイラスト制作を無償で行っていた。限られた色数ながらも、単純明快に描かれた映画の登場人物を大胆に配置し、インパクトのある画面作りを行った。この時の経験が、その後も続く、特徴をうまく捉えた肖像画の制作で脈々と受け継がれている。65年には、松屋銀座で開かれたグラフィックデザインの展覧会「ペルソナ」展に参加。68年に独立。72年に関わった遠藤周作著『ぐうたら人間学』(講談社)以降、装丁の仕事が増え、77年より『週刊文春』の表紙を40年以上手掛け、2008(平成20)年には、雑誌創刊50周年記念として、これまでの表紙を収録した『表紙はうたう』(文藝春秋、2008年)が出版された。星新一や丸谷才一、つかこうへいら数多くの作家、劇作家の本で装丁や挿絵を担当したことでも知られる。装丁や挿絵には、線画を基調としたシンプルなイラストレーションを多く用いているが、独特のゆるいタッチで描かれたコミカルな人物やキャラクターは、軽やかでありながら人目を引く。
 日本で「イラストレーション」という言葉を広めたのも和田の大きな功績である。1960年代中頃から、時代にあった新しい挿絵を「イラストレーション」と呼び、それを描く「イラストレーター」と呼ばれる職能の認知を高めるための活動に尽力した。64年に宇野亜喜良、横尾忠則、灘本唯人、山下勇三らと共に東京イラストレーターズ・クラブを設立。65年に、雑誌『話の特集』のアートディレクターを務め、編集にも関わり、原稿に応じて絵の指示等も行った。ここで、作家クレジットを明記し、「イラストレーション」という言葉を意識的に使うようにした。95 年に東京イラストレーターズ・ソサエティに参加、2001年から05年まで理事長を務めた。
 デザイナー、イラストレーターの仕事の傍ら、ジャズに関する記事や書籍の執筆や編集に関わり『映画とジャズ』(ビクター音楽産業、1992年)『ジャズと映画と仲間たち』(猪腰弘之と共著、講談社、2001年)等を出版している。96年6月号から97年5月号の『芸術新潮』誌面で『ポートレイト・イン・ジャズ』を連載。和田が描いたジャズミュージシャンの肖像に、作家の村上春樹が文章を寄せるというものだった。
 また映画愛好家としても知られ、『キネマ旬報』等で映画に関する記事を発表する一方で、『お楽しみはこれからだ:映画の名セリフ』シリーズ(文藝春秋、1975~97年)、『ブラウン管の映画館』(ダイヤモンド社、1991年)、『忘れられそうで忘れられない映画』(ワイズ出版、2018年)等著作も多く持つ。84年には映画『麻雀放浪記』を初監督。『怪盗ジゴマ 音楽篇』(1988年) 『快盗ルビイ』(1988年) 『怖がる人々』(1994年)、『しずかなあやしい午後に』(椎名誠、太田和彦と共同監督、1997年)、『真夜中まで』(1999年)とこれまで6本の監督作品がある。
 出版に関する受賞歴は61年毎日出版文化賞、69年文藝春秋漫画賞、74年講談社出版文化賞(ブックデザイン部門)、2015年日本漫画家協会賞特別賞等。ほかにも89年ブルーリボン賞、94年菊池寛賞、98年毎日デザイン賞等多数。
 なお没後、作品や資料は母校である多摩美術大学のアートアーカイヴセンターに寄贈された。2021(令和3)年10月、東京オペラシティ アートギャラリーにて「和田誠展」が開催された。

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(500頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「和田誠」『日本美術年鑑』令和2年版(500頁)
例)「和田誠 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2041086.html(閲覧日 2024-03-05)

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