吉岡幸雄

没年月日:2019/09/30
分野:, (工)
読み:よしおかさちお

 染色家の吉岡幸雄は9月30日、心筋梗塞のため急逝した。享年73。
 吉岡幸雄は、1946(昭和21)年4月2日、常雄、俊子の長男として、京都市伏見区に生まれる。生家は江戸時代から続く染屋で、父は染色家であり大阪芸術大学名誉教授の吉岡常雄、伯父は日本画家の吉岡堅二である。
 71年、早稲田大学第一文学部を卒業後、73年に美術図書出版「紫紅社」を設立。同社では、『染織の美』(全30巻)、『日本の意匠(デザイン)』(全16巻)の編集長、美術展覧会「日本の色」、「桜」(東京・銀座松屋) などの企画・監修、広告のアートディレクターを務める。
 88年、42歳で生家「染司よしおか」五代目当主を継ぐ。染師である福田伝士と共に化学染料を使わずに日本の伝統色の再現に取り組む。「染司よしおか」は、古社寺の伝統的な仕事に従事しており、東大寺修二会 (お水取り)の椿の造り花の紅花染和紙、薬師寺修二会(花会式)の造り花の紫根染和紙、石清水八幡宮放生会の「御花神饌」を植物染で奉納している。1991(平成3)年、きもの文化賞を受賞。同年、薬師寺の玄奘三蔵院の幡を制作する。翌年には、薬師寺の「玄奘三蔵会大祭」での伎楽装束45領を制作し、93年には東大寺の伎楽装束40領を植物染で再現する。
 以後、法隆寺の聖徳太子1380年忌にあたり法隆寺伝来「四騎獅子狩文錦」の復元(NHK BSハイビジョンにて放映、2001年)や、海外へも活躍の幅を広げる。2005年、ドイツのオイティン東部ホルシュタイン博物館にて、山本英明、山本隆博と共に「“Lack-und Farbekunst aus Japan”日本の塗りものと染めもの」展を開催。
 07年4月、サントリー美術館「開館記念展Ⅰ日本を祝う」にて「祝の縷」を展示。5月にはイギリス大英博物館(British Museum)において「日本の布と糸“JAPANESE TEXTILE”」について講演する。翌年も海外での活動が続き、米国ジョ-ジア大学、インディアナポリス大学、ワシントン大学にて日本の染織について講演。09年には、京都府文化賞功労賞を受賞。9月、オーストラリアのシドニーで開催された「2009年色彩国際会議“11th Congress of the International Colour Association」ではゲストスピーカーとして講演する。
 10年にはこれまでの活動が評価され、第58回菊池寛賞を受賞(日本文学振興会主催)。翌年、東大阪市民美術センターにて菊池寛賞受賞記念「日本の色 千年の彩展」を開催する。12月より、吉岡幸雄、福田伝士の情熱を追ったドキュメンタリー映画「紫」が公開される(企画製作 株式会社エーティーエムケー)。12年3月には第63回 日本放送協会放送文化賞を受賞。
 14年、薬師寺の「玄奘三蔵会大祭」では、92年に制作した玄奘三蔵1350年御遠忌法要の伎楽衣裳を再制作する。10月には台湾で開催された「国際天然染料クラフトデザイン展“International Craft Design Exhibition on Natural Dyes 2014”」にて作品を展示。12月、マレーシアの自然史博物館にて「吉岡幸雄個展“Revive the Legend ― Revitalising Japan’s Traditional Colours from the Nature of Asia”」を開催。
 18年、英国V&A博物館にて吉岡幸雄作品展「失われた色を求めて“In Search of Forgotten Colours”」が開催される(NHK制作「失われた色を求めて」の映像<2017年5月放映>はV&A博物館YouTubeチャンネルより公開されている)。翌年、イギリス ロンドンのジャパンハウスにて「かさねの森 染司よしおか“Living Colours:Kasane ―the Language of Japanese Colour Combinations”」が開催。
 没後、2021(令和3)年には細見美術館にて「特別展日本の色―吉岡幸雄の仕事と蒐集―」(1月5日~5月9日)が開催された。
 日本人が育んできた伝統色を失ってはならないという信念に基づいた活動は、日本の染織文化の豊かさを多くの人々が学ぶ機会となった。
 主な刊行物に日本の伝統色466色を植物染料で再現した『日本の色辞典』(紫紅社、2000年)、『日本の色を染める』(岩波新書、2002年)、『王朝のかさね色辞典』(紫紅社、2011年)等がある。
 活躍の詳細はホームページ紫のゆかり吉岡幸雄の色彩界(https://www.sachio‐yoshioka.com)を参照。

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(499頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「吉岡幸雄」『日本美術年鑑』令和2年版(499頁)
例)「吉岡幸雄 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2041081.html(閲覧日 2024-06-26)

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