小沢健志

没年月日:2019/07/04
分野:, (学)
読み:おざわたけし

 写真史家の小沢健志は7月4日、老衰のため東京都板橋区内の自宅で死去した。享年94。
 1925(大正14)年1月9日東京市に生まれる。1950(昭和25)年日本大学法文学部芸術学科卒業。51年より国立博物館附属美術研究所(現、東京文化財研究所)資料部に文部技官として勤務(1961年3月まで)。日本大学芸術学部講師を経て、74年より九州産業大学芸術学部・同大学院芸術研究科教授として教鞭をとった(1993年3月退任)。
 専門は幕末・明治期における日本写真史。この分野の開拓者の一人として、各地に遺された初期写真の調査や文献の収集を重ね、初期日本写真史の実証的研究に取り組んだ。その業績の一つに75年鹿児島の島津家別邸で発見された肖像写真を調査し、これを銀板写真(ダゲレオタイプ)による〓摩藩十一代藩主島津斉彬像と判定したことがあげられる。関連した文書などから、同肖像写真は、藩命により銀板写真の研究に取り組んだ〓摩藩士市来四郎らによって1857(安政4)年に撮影されたものであることが確認され、幕末期、日本人による銀板写真の撮影は成功しなかったとされてきた従来の定説を書き換える発見となった。この島津斉彬像は1999(平成11)年、写真としては初の重要文化財指定を受けている。
 91年には日本写真芸術学会の設立に参加、副会長に就任。98年から2002年まで会長を務め、退任後は同名誉会長となる。また日本写真協会副会長、東京都歴史文化財団理事等を歴任した。
 主要な著作に『勝海舟:写真秘録』(尾崎秀樹との共著、講談社、1974年)、日本写真協会編『日本写真史年表』(編集委員として編纂に参加、講談社、1976年)、『日本の写真史:幕末の伝播から明治期まで』(ニッコールクラブ、1986年、のち、『幕末・明治の写真』と改題、ちくま学芸文庫、1997年)、『写真で見る幕末・明治』(編著、世界文化社、1990年、新版、世界文化社、2000年)、『幕末:写真の時代』(編著、筑摩書房、1994年、のち、ちくま学芸文庫、1996年)、『写真明治の戦争』(編著、筑摩書房、2001年)、『古写真で見る幕末・明治の美人図鑑』(編著、世界文化社、2001年)、『写真で見る関東大震災』(編著、ちくま文庫、2003年)等がある。幕末・明治期の写真の調査研究を通じて、数多くの初期写真の作例や文献等の関連史料を自ら収集したことでも知られ、そのコレクションは上記の著作においても多く紹介されている。
 長年の功績に対し、90年に日本写真協会賞功労賞、02年には日本写真芸術学会名誉賞を受賞した。

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(495頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「小沢健志」『日本美術年鑑』令和2年版(495頁)
例)「小沢健志 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2041051.html(閲覧日 2024-04-29)

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