毛利久
文学博士、元奈良大学教授、文化財保護審議会専門委員、京都国立博物館名誉館員の毛利久は9月10日午前9時14分、脳動脈硬化症のため自宅で死去。享年70。大正5年10月4日、愛媛県宇和島市笹町に生れる。昭和13年京都帝国大学文学部史学科に入学、国史を専攻し、16年、論文「飛鳥寧楽時代仏教彫塑の研究」を提出し卒業。同年京都帝国大学大学院に入学、日本美術考古学を研究するとともに、京都府寺院重宝臨時調査事務の嘱託となる。22年京都帝国大学大学院を退学、恩賜京都博物館鑑査員補、24年同鑑査員となる。27年京都国立博物館学芸課資料室長、37年美術室長を経て、42年神戸大学文学部教授に転任する。48年から50年まで文学部長を務め、55年停年退官の後、奈良大学文学部教授に迎えられる。
日本仏教彫刻史を専門とし、実証的な作品研究と緻密な文献考証により、仏像はもちろん肖像や仮面など幅広く研究し、多くの業績をあげる。30年京都国立博物館において担当した特別展「日本の仮面」は仮面史研究にとって画期的であり、また仏師研究に力を注ぎ、とくに鎌倉時代の名匠快慶の芸術とその母胎としての奈良仏師の体系的研究は代表的で、37年、その成果をまとめた論文「仏師快慶論」により京都大学より文学博士の学位を受ける。神戸大学に転じた頃から東アジアという文化背景のなかで日本の初期仏教彫刻を巨視的に捉えるべく、しばしば訪韓、現地実査を行ない、その成果を逐次発表した。これらの業績とともに、26年以来、美術史学会常任委員として学会に貢献し、さらに45年より国の文化財保護審議会専門委員を務めたほか、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県などの文化財保護審議会委員として文化財保護行政にも貢献し、61年勲三等旭日中綬章を受章する。死去により従四位に叙される。
(主要著・編書)
新薬師寺考 河原書店 22年
快慶の研究 大勝堂 29年
日本の仮面 京都国立博物館 30年
仏師快慶論 吉川弘文館 36年(同増補版62年)
六波羅蜜寺 中央公論美術出版 39年
運慶と鎌倉彫刻 平凡社 39年
能面選 京都国立博物館 40年
奈良の寺院と天平彫刻(共著) 小学館 41年
日本彫刻史基礎資料集成(共編) 中央公論美術出版 41~46年
肖像彫刻 至文堂 42年
奈良六大寺大観(共編) 岩波書店 43~48年
天平彫刻 小学館 45年
日本仏教彫刻史の研究 法蔵館 45年
正倉院の伎楽面(共著) 正倉院事務所 47年
興福寺八部衆と十大弟子 岩波書店 48年
大和古寺大観(共編) 岩波書店 51~53年
日本仏像史研究 法蔵館 55年
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)
例)「毛利久」『日本美術年鑑』昭和62・63年版(335頁)
例)「毛利久 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10206.html(閲覧日 2024-10-05)
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