小林章男

没年月日:2010/03/27
分野:, (建)

 屋根瓦の製作者であり、国の選定保存技術保持者であった小林章男は、膀胱癌のため奈良市の病院で3月27日死去した。享年88。1921(大正10)年12月7日、江戸時代文政年間からつづく瓦匠、屋号「瓦宇」(かわらう)の当主の長男として奈良県奈良市に生まれる。1938(昭和13)年、家業の瓦製造業に就き、以後数多くの国宝、重要文化財等に指定された建造物の屋根瓦の製造及び修理事業に携わる。81年、奈良県瓦葺高等職業訓練学校(奈良県天理市)校長に就任、88年まで務める。82年、「現代の名工」として労働大臣表彰を受ける。84年、株式会社瓦宇工業所代表取締役に就任。同年、「鬼瓦づくり」で第4回伝統文化ポーラ賞(ポーラ伝統文化振興財団)の特賞を受賞。88年、国宝「法隆寺五重塔」をはじめとして、本瓦葺の建造物の修理で捕捉される役瓦(巴瓦、鬼瓦、鯱、鴟尾等)の製作技術が高く評価され、「屋根瓦製作(鬼師)」として国の選定保存技術保持者に認定される。1991(平成3)年、瓦職人の集まりである「日本鬼師の会」の会長に就任(95年まで)。同年、日本伝統瓦技術保存会の設立にあたり会長となる(97年まで)。また勲六等瑞宝章を受章。2002年、株式会社瓦宇工業所の会長に就任。代表的な仕事としては、昭和の東大寺大仏殿の瓦葺替工事を棟梁として成し遂げた。ほかに古建築瓦葺替工事は、近畿、中国、四国を中心に全国に及んでいる。この間、古代、中世から近世にわたるまで、瓦の様式、製法等を、全国にわたる調査と製作という実践を通じて蓄積された経験、技術、知見は、建築史、歴史考古学等の学界に多大に寄与した。また、多くの著作を残しており、主要な著作は下記のとおりである。『対談・鬼瓦その他』(大蔵経済出版、1980年)、『鬼瓦』(大蔵経済出版、1981年)、中村光行共著『鬼・鬼瓦(INAX BOOKLET)』(INAX、1982年)、『生きている鬼瓦』(石州瓦販売協業組合、1985年)、『獅子口を探る』(小林章男、1995年)、山田脩二共著『瓦―歴史とデザイン』(淡交社、2001年)、日本鬼師の会、京都府大江町共編『鬼瓦(棟端飾瓦)造り 鬼瓦読本』(日本鬼師の会、2004年)。なお、『史迹と美術』(史迹美術同攷会)における連載「鬼瓦百選」(第1回は721号)は、生前に原稿がすべて準備されていたため、同誌820号(2011年12月)において100回をもって完結した。

出 典:『日本美術年鑑』平成23年版(432頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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