桑原住雄

没年月日:2007/12/15
分野:, (評)

 武蔵野美術大学名誉教授で、美術史研究、美術評論家であった桑原住雄は、病のため長らく療養中であったが、12月15日、心不全のため東京都世田谷区の病院で死去した。享年83。1924(大正13)年、広島県広島市に生まれ、幼少時に家族とともに台湾に渡り、旧制台北高等学校を卒業、東京帝国大学文学部に進む。戦中期に応召したが、戦後に復学し美術史を専攻、さらに同大学大学院を修了。東京新聞社、朝日新聞社に勤務。その間の1963(昭和38)年に、アメリカ国務省の人物交流計画と称されたプログラムにより招聘され、ニューヨークをはじめ、アメリカ各地を訪れた。当時は、抽象表現主義の隆盛から、ポップアートが誕生する時代で、アメリカの現代美術に直にふれ、また、19世紀以来のアメリカ美術の歴史のなかにリアリズムの底流があることに強い関心を抱き、以後、アメリカ美術も研究テーマのひとつとなった。77年4月に筑波大学芸術学系に転じて教授として82年3月まで後進の指導にあたった。ついで82年4月から1995(平成7)年3月まで、武蔵野美術大学教授として務め、退任後同大学名誉教授となった。生前の研究、評論活動は、19世紀から現代までのアメリカ美術の歴史、及び古今の日本美術史に及び、旺盛な評論活動を行った。とりわけアメリカ美術については、1886(明治19)年に来日したアメリカ人画家ジョン・ラファージ(1835―1910)の残した滞日記録『画家東遊録』の翻訳(久富貢との共訳)と、同書に付した論文「ラファージと日本美術」に示されたように、それまで日本において紹介されることのなかったアメリカにおけるジャポニスム研究、及び日米の美術交流史研究が特筆される。また、日本美術については、前田青邨東山魁夷髙山辰雄岩橋英遠荻須高徳宮本三郎から現代作家まで、多数にわたる作家論、評論を残した。主要な業績は、下記にあげる単行書、翻訳書にあるとおりであるが、なかでも古希を記念して刊行された『桑原住雄美術論集 日本篇、アメリカ篇』(沖積舎、1995・96年)には、生前の研究、評論の成果が集約されている。

編著書:

『東京美術散歩』(角川書店、1964年)
『日本の自画像』(南北社、1966年、改訂版沖積舎、1993年)
『日本画の内景』(三彩社、1974、76年)
中山公男、中森義宗共著『モナ・リザ』(朝日ソノラマ、1974年)
『現代日本の美術5 東山魁夷』(集英社、1974年)
『現代日本の美術7 東山魁夷』(集英社、1976年、普及版)
『アメリカ絵画の系譜』(美術出版社、1977年)
『日本の名画15 前田青邨』(中央公論社、1977年)
『カンヴァス日本の名画15 前田青邨』(中央公論社、1979年)
東山魁夷の世界』(講談社、1981年)
東山魁夷ビブリオテカ』(美術出版社、1982年)
『現代日本画全集 第9巻 岩橋英遠』(集英社、1982年)
『日本の近代絵画 伝統と創造(NHK市民大学)』(日本放送出版協会、1985年)
田中穣共編『20世紀日本の美術 アート・ギャラリー・ジャパン16 東郷青児宮本三郎』(編著担当「宮本三郎」、集英社、1986年)
東山魁夷』(講談社、1995年)
桑原住雄美術論集 日本篇』(沖積舎、1995年)
桑原住雄美術論集 アメリカ篇』(沖積舎、1996年)
『広場の芸術』(日貿出版社、1998年)
桑原住雄詩、香月泰男画『夢マンダラ』(日貿出版社、2002年)

翻訳書:

翻訳バーバラ・ローズ著『二十世紀アメリカ美術』(美術出版社、1970年)
翻訳ハロルド・ローゼンバーグ著『荒野は壷にのみこまれた 大衆状況のなかの美術』(美術出版社、1972年)
翻訳(桑原未知世共訳)エイブラハム・A・デイビッドソン著『アメリカ美術の歴史』(PARCO出版、1976年)
翻訳(下山肇共訳)マヌエル・ガッサー著『巨匠たちの自画像』(新潮社、1977年)
翻訳(久富貢共訳)ジョン・ラファージ著『画家東遊録』(中央公論美術出版、1981年)
翻訳バーナード・ブリソン・シャーン著『ベンシャーン画集』(リブロポート、1981年)
翻訳監修『ワイエス画集3』(リブロポート、1987年)
翻訳監修『ワイエス画集4』(リブロポート、1988年)
翻訳(斎藤泰嘉共訳)ハーリー・F・ゴーグ著『モダン・マスターズ・シリーズ ウィレム・デ・クーニング』(美術出版社、1989年)

出 典:『日本美術年鑑』平成20年版(395-396頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
『日本美術年鑑』に収録されている以下の記事にも「桑原住雄」が含まれます。
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