山田貢

没年月日:2002/12/07
分野:, (工)
読み:やまだみつぎ

 友禅作家で重要無形文化財保持者の山田貢は、12月7日午前0時10分、心不全のため埼玉県坂戸市の病院で死去した。享年90。 1912(明治45)年2月3日、岐阜県岐阜市に生まれる。14歳で友禅作家の中村勝馬に師事して手書友禅、蠟染の技法を学んだ。1929(昭和4)年、師の中村に同行して東京に出るが、45年には師とともに山梨県に疎開し移住した。47年の第32回二科展工芸部に初入選し、以後連続入選を果たす。この間の51年には友禅作家として独立するが、その後も友禅染の技術の錬磨に励むとともに、友禅染め誕生期の品格を理想としながら能装束・狂言装束の意匠と文様の研究を行う。57年からは日本伝統工芸展に出品し、60年には日本工芸会正会員となる。68年、日本工芸会常任理事、染織部会長に就く。71年から79年にかけて、東京藝術大学美術学部非常勤講師を務め、後進の指導にもあたる。77年の第24回日本伝統工芸展では、能装束の鱗文をヒントに網干の三角模様を連続させた風景模様を配した«夕凪»が日本工芸会賞(奨励賞)を受賞する。81年、日本工芸会が主催した「茶屋染帷子」の復元事業に参加し、糸目糊の担当としてその指導を行う。作品は、写生を基にした松文・麦穂文・波文・魚文などの自然物のほか、網干文に代表される人工物、さらには巴文などの古典的な模様を題材に、伝統的な糯糊による糸目・堰出し・叩きなどの各糊防染の手法を用いて色挿しを行うもので、巧みな糊置きにより、絵際のはっきりした力強い線構成による簡明な意匠が好評を得る。82年世田谷区特別文化功労者。83年には勲四等瑞宝章を受章。84年、「友禅」で重要無形文化財保持者に認定される。翌年には日本工芸会参与に就任。87年金沢美術工芸大学の非常勤講師となり、再び後進の育成にあたる。1990(平成2)年、第2回茶屋染帷子の復元事業に参加し、糸目糊の研究に専念してその成果を示す。94年と95年には、重要無形文化財「友禅」伝承者養成研修事業の講師として伝統技法の保存・公開・育成に尽力する。同年、小田急百貨店において個展を開催。ポーラ伝統文化振興財団がビデオ「山田貢の友禅―凪―」を制作。99年には文化学園服飾博物館において「友禅 東京派五〇年の軌跡―中村勝馬山田貢田島比呂子中村光哉―」展が開催された。作品は、伝統的な技法を駆使しつつも、大胆な構図と清新な色調、現代的な感覚で見る者を魅了した。また、没するまで精力的に活動し、復元事業をはじめ後進の育成にも専念するなど、伝統工芸の保存・公開に尽力した功績は大きい。

出 典:『日本美術年鑑』平成15年版(247-247頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「山田貢」『日本美術年鑑』平成15年版(247-247頁)
例)「山田貢 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28263.html(閲覧日 2024-04-26)

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