吉川逸治

没年月日:2002/12/05
分野:, (学)

 フランスのサン・サヴァン教会堂壁画の研究で知られた西洋中世美術史研究者、吉川逸治は12月5日午後9時50分、肺炎のため神奈川県鎌倉市由比ガ浜の自宅で死去した。享年93。 1908(明治41)年12月14日、横浜市神奈川区青木町台に生まれる。1929(昭和4)年旧制浦和高等学校文科を卒業。33年東京帝国大学美学美術史学科を卒業。同年フランスへ留学しパリ大学でアンリ・フォションに師事してフランス中世美術を研究。34年よりポアティエ市にあるサン・サヴァン教会堂のロマネスク壁画を調査し、39年その成果をまとめた学位論文Apocalypse de Saint‐Savin(サン・サヴァン教会堂の黙示録画の研究)をパリ大学に提出して博士号を取得。同年8月より9月まで、アフガニスタン、インドを巡遊して帰国する。44年東京美術学校(現東京藝術大学)の講師となり、西洋美術史を講じ、同47年同学教授となる。49年『中世の美術』(東京堂 1948年)により昭和24年度毎日出版文化賞受賞。53年東京大学助教授となり、55年より69年まで同学美術史学科教授をつとめる。その間の58年より61年まで大岡昇平、中村光夫らと同人誌『声』(丸善)に参加し、59年から61年までパリ大学都市日本館館長をつとめる。69年名古屋大学教授となり72年退官。この間、59年から76年までに3度にわたりフランスのサン・サヴァン教会堂を調査し、その成果の集大成として『サン・サヴァン教会堂のロマネスク壁画』(新潮社 1982年)を刊行した。その研究方法は、現地でのフィールド・ワークにもとづく実証的なもので、国際的に高い評価を得る。こうした調査により75年ポアティエ大学から名誉教授号を授与される。72年より81年まで東海大学教授、同81年から1999(平成11)年まで大和文華館館長をつとめた。82年より日本学士院会員となり、84年フランス学士院ジャン・レイノー賞を受賞する。日本における西洋美術史学研究の上で、徹底的な現地調査と広汎な文献の渉猟を基礎とする方法論を実践した先駆的研究者として位置づけられる。 先述の著作のほか、主要な著書に『近代美術への天才たち』(新潮社 1964年)、『ロマネスク美術を索めて』(美術出版社 1979年)などがあり、翻訳・編集・監修を担当した書籍に『イタリア絵画史』第1巻(スタンダール他著、河出書房 1943年)、『ルーヴルの名宝』(講談社 1966年)、『近代絵画』(A・オザンファン他著、鹿島出版会、SD選書 1968年)、『紀元千年のヨーロッパ』(L・グロデッキ他著、新潮社 1976年)、『世界版画大系』(筑摩書房 1972―74年)、『フィレンツェの美術』(小学館 1973―74年)、『ルーヴルとパリの美術』(小学館 1985―88年)などがある。

出 典:『日本美術年鑑』平成15年版(247頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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