南川三治郎

没年月日:2018/02/06
分野:, (写)
読み:みなみかわさんじろう

 写真家の南川三治郎は2月6日、急性心不全のため東京都渋谷区の病院で死去した。享年72。
 1945(昭和20)年9月14日、三重県員弁郡(現、いなべ市)に生まれる。三重県立桑名高等学校卒業。66年東京写真短期大学(現、東京工芸大学)卒業。株式会社グラフ社に入社、写真部に勤務するとともに67年に開塾した大宅壮一東京マスコミ塾に第一期生として学ぶ。その後勤務先を退社し、一年間のパリ滞在を経て70年よりフリーランスの写真家として活動する。74年、20世紀を代表する欧米の美術家を取材するプロジェクトに着手、マルク・シャガールやジョルジュ・デ・キリコ、サルバドール・ダリらをアトリエに訪ねて撮影した写真による『アトリエの巨匠たち』(朝日ソノラマ、1980年)にまとめた。多くは面会取材自体が困難な海外の芸術家を訪ね、その住まいや仕事場といった創造の空間ごと写真に収めるという、当時は先例のなかった手法によって美術家たちの人物像を描写したことが高く評価され、同写真集により80年、第30回日本写真協会賞新人賞を受賞。また同様の手法により、グレアム・グリーンやマイケル・クライトンら欧米のミステリー作家を取材した『推理作家の発想工房』(文芸春秋、1985年)で86年、第36回日本写真協会賞年度賞を受賞した。代表作となったこの二作の他、広くヨーロッパの文化をめぐる取材を重ね、『ヨーロッパの窯場と焼きもの』(美術出版社、1980年)、『世紀末ウィーンを歩く』(池内紀との共著、新潮社、1987年)、『ヨーロッパの貴族と令嬢たち』(河出書房新社、1993年)、『イコン(聖像画)の道:ビザンチンの残照を追って』(河出書房新社、1997年)、『ヴェルサイユ宮殿』(黙出版、2000年)、『皇妃エリザベート永遠の美』(世界文化社、2006年)など数多い著作にまとめた。
 また2004(平成16)年頃より、世界遺産に指定されている日本とヨーロッパの巡礼の道の取材を始め、『世界遺産巡礼の道をゆく 熊野古道』、『世界遺産巡礼の道をゆく カミーノ・デ・サンティアゴ』(ともに玉川大学出版部、2007年)などにまとめた。日本文化の古層に対する関心は、故郷に近い伊勢神宮の取材へと展開し、13年の第62回式年遷宮をめぐって06年から約8年にわたって撮影を重ね、中日新聞に写真と文による「聖地伊勢へ」を連載(2011年4月から2013年12月)、14年に三重県総合博物館で「『日本の心』第六十二回神宮式年遷宮写真展」を開催した。
 長年の制作活動に対して15年、第65回日本写真協会賞作家賞を受賞。また16年、第10回飯田市藤本四八写真文化賞を受賞した。

出 典:『日本美術年鑑』令和元年版(498-499頁)
登録日:2022年08月16日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「南川三治郎」『日本美術年鑑』令和元年版(498-499頁)
例)「南川三治郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/995631.html(閲覧日 2024-04-20)

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