桐敷真次郎

没年月日:2017/12/07
分野:, (学)
読み:きりしきしんじろう

 建築史家、東京都立大学名誉教授の桐敷真次郎は12月7日死去した。享年91。
 1926(大正15)年8月31日、東京都神田区(現、千代田区)に生まれる。1947年に第一高等学校理工科甲類(旧制)を卒業、同年東京帝国大学第二工学部建築学科(旧制)に進学、53年には同大学院を退学して東京都立大学工学部建築学科の助手に就任した。60年には助教授、71年に教授に昇任し、長きにわたって東京都立大学にて教鞭を執った。1990(平成2)年に同大学を定年退職し、その後97年まで東京家政学院大学家政学部住居学科にて教授を務めた。
 我が国における西洋建築史学の先駆者の一人であり、そのことは2012年度に受賞した日本建築学会大賞の受賞理由「わが国の西洋建築史学に関する研究・教育および建築評論に対する多大な貢献」に如実に表されている。それまで国内での書物を通じた研究が中心であったなかで、ロンドン大学コートールド美術史研究所に留学し、海外留学の戦後第一世代の一人として後進に道を開いた業績も銘記すべきであろう。
 桐敷の幅広い研究分野の中でも、その中核をなすのは何と言ってもイタリア・ルネサンス研究である。86年に日本建築学会賞(論文)を受賞した「パラーディオ『建築四書』の研究」、及びイタリアに関する優れた著作に対して贈られるマルコ・ポーロ賞を受賞した『パラーディオ「建築四書」注解』(中央公論美術出版)は、桐敷の業績の中でも特によく知られている。
 また、『建築学大系5「西洋建築史」』(彰国社、1956年)、『西洋建築史図集』(彰国社、1981年(三訂版))など建築教育の場で広く用いられる基本書を著述・編纂したほか、日本の近代建築の通史書である『明治の建築』(日本経済新聞社、1965年)も広く参照される労作である。また、個別の研究分野に留まらず建築史全般にかかる著作の翻訳を精力的に行ったことでも知られ、J.M.リチャーズ『近代建築とは何か』(彰国社、1952年)、D.ワトキン『建築史学の興隆』(中央公論美術出版、1993年)、オーギュスト・ショワジー『建築史(上下)』(中央公論美術出版、2008年)、ジェフリー・スコット『ヒューマニズムの建築(注解)』(中央公論美術出版、2011年)などの翻訳がある。さらに、英訳を通じたわが国の建築の対外発信にも努めた。
 他方で、地中海学会会長(1997~2001年)を務め、また自身の個別的研究としてイギリスのタウンハウスや江戸の都市計画に関する論考などがある。さらに現代建築への関心も強く、多くの建築批評やくまもとアートポリスとの関わりも忘れることができない。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(458-459頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「桐敷真次郎」『日本美術年鑑』平成30年版(458-459頁)
例)「桐敷真次郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824371.html(閲覧日 2024-05-21)

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