河原正彦

没年月日:2017/05/09
分野:, (学)
読み:かわはらまさひこ

 京都国立博物館名誉館員で、元京都橘大学教授の河原正彦は5月9日、細菌性肺炎のため京都府城陽市内の病院で死去した。享年81。
 1935(昭和10)年9月25日、長野市に生まれる。68年、同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻博士課程単位取得退学。大学院在籍中の64年より京都府立総合資料館に4年間勤務し、68年に京都国立博物館へ職場を転じた。76年から同館学芸課工芸室長、95年から同館学芸課長を務めた。1997(平成9)年に退官した後、2006年まで京都橘女子大学(後に京都橘大学)教授として教鞭を執る傍ら、滋賀県立陶芸の森館長を務めた。
 京都国立博物館には、陶磁器担当の研究員として勤務していたが、工芸品全般、とりわけ意匠としての文様に造詣が深く、その一端を京都国立博物館の特別展覧会「日本の意匠―工芸にみる古典文学の世界」(1978年)の図録論文「工芸にみる古典文学意匠の流れ」をはじめとして、共編著の『日本の文様』全30巻および別冊3巻(光琳社出版、1970~79年)の中に窺うことができる。
 陶磁器に関しては、『古清水』(京都書院、1972年)、『陶磁大系26京焼』(〓凡社、1973年)、「御室仁清窯の基礎的研究―文献史料を中心とする考察」(『東洋陶磁』4、1974年)、『日本陶磁全集27仁清』(中央公論社、1976年)、『日本のやきもの22仁清』(講談社、1976年)、『日本のやきもの 現代の巨匠15清水六兵衛』(講談社、1977年)、『日本陶磁全集29頴川・木米』(中央公論社、1978年)、『乾山』(日本の美術154、1979年)、『頴川・木米・道八』(日本の美術227、1985年)、「仁清作色絵雉香炉―その製作期をめぐって」(『國華』1100、1987年)、「京焼の「陶法伝書」―『陶工必用』『陶磁製方』『陶器指南』」(『学叢』28、2006年)など京焼に関する著作が目立って多いが、『陶磁大系9丹波』(〓凡社、1975年)、『日本陶磁全集12信楽』(中央公論社、1977年)、『信楽と伊賀』(日本の美術169、1980年)、『丹波』(日本の美術398、1999年)など焼締陶器に関する著書も少なくない。さらには、『染付伊万里大皿』(京都書院、1974年)、『古染付』(京都書院、1977年)、『唐津』(日本の美術136、1977年)といった唐津焼・伊万里焼・中国陶磁に関する著作も手掛けるなど、陶磁器全般に関する広汎な見識を有していた。
 京都国立博物館在職時に企画を担当し、日本人と中国陶磁の関わりを古代から近世まで通時代的に捉えて展観してみせた特別展覧会「日本人が好んだ中国陶磁」(1991年)では、研究領域が幅広い陶磁器研究者としての本領を遺憾なく発揮している。
 75年から01年まで東洋陶磁学会常任委員、85年には文化史学会評議委員を務め、93年には小山冨士夫記念賞を受賞した。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(442-443頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「河原正彦」『日本美術年鑑』平成30年版(442-443頁)
例)「河原正彦 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824246.html(閲覧日 2024-04-20)

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