吉田大朋

没年月日:2017/02/10
分野:, (写)
読み:よしだだいほう

 写真家の吉田大朋は2月10日、心不全のため東京都内の自宅で死去した。享年82。
 1934(昭和9)年5月5日東京に生まれる。53年東京都立石神井高等学校卒業。写真家土方健一に師事。59年準朝日広告賞を受賞し、コマーシャル写真家として頭角を現す。61年『ハイファッション』誌でデビュー、新進のファッション写真家として注目され、多くのファッション誌、女性誌に寄稿するようになる。
 文化出版局で『ハイファッション』などを担当した編集者今井田勲の勧めで65年に渡仏、パリに二年間滞在し、日本人の写真家として初めてフランスのファッション誌『ELLE』と専属契約を結ぶ。また欧米の先端的モードを日本に紹介する窓口としても大きな役割を果たした。71年には渡米、ニューヨークに一年間滞在。75年には再びパリに拠点を移し、約三年半の滞在中、『VOGUE』誌などに寄稿するとともに、パリをはじめヨーロッパ各地の土地や人々の撮影にもとりくんだ。この間、70年に『an・an』誌が創刊された際に、エディトリアルデザインを担当した堀内誠一に請われて参画、海外ロケのファッション写真を寄稿するなど、日本におけるファッション写真の第一人者として、長く一線で活躍した。
 ファッションの他に著名人のポートレイトをはじめ幅広い撮影をてがけ、とくにパリの都市風景をめぐる写真集『巴里』(文化出版局、1979年)は、モードの最先端に並走するファッション写真の仕事とは対照的に、繊細かつ洒脱な感覚で、都市パリの日常に堆積する歴史や文化を丹念にすくいとった仕事として評価された。79年同題の個展を開催(ミキモト・ホール、東京)。その他の写真集にフランスのファッション・デザイナー、マダム・グレ(ジェルメーヌ・エミリ・クレブ)の作品世界をとらえた『グレの世界』(文化出版局、1980年)や、『地中海夏の記憶』(キヤノン販売キヤノンクラブ、1981年)、『古都京の四季』(朝日新聞社、1982年)などがある。また87年から2001(平成13)年にかけ、東京綜合写真専門学校で講師を務め、後進の指導にあたった。
 急逝する直前まで精力的に仕事を続けており、準備中であった箱根写真美術館での個展は、死去後、17年4月から5月にかけて「レクイエム吉田大朋写真展 軽妙洒脱」として開催された。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(432頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「吉田大朋」『日本美術年鑑』平成30年版(432頁)
例)「吉田大朋 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824166.html(閲覧日 2025-05-16)

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