井出洋一郎

没年月日:2016/10/19
分野:, (学)
読み:いでよういちろう

 19世紀フランス絵画を専門とする美術史研究者で、美術評論家の井出洋一郎は、10月19日に胆管がんのため死去した。享年67。
 1949(昭和24)年5月8日、群馬県高崎市昭和町に生まれる。上智大学外国語学部フランス語学科を卒業後、早稲田大学大学院文学研究科に進学し、78年に同大学院博士課程を満期退学(西洋美術史専攻)。同年、山梨県立美術館学芸員に採用される。在職中、同美術館のミレー・レクションを担当した。87年に退職し、私立の村内美術館(東京都八王子市)の顧問を務めるかたわら美術評論家として活動した。また、教育面では、非常勤講師として上智大学で西洋美術史を担当し、跡見学園女子大学、武蔵野美術大学、実践女子大学で博物館学等を担当した。1992(平成4)年に東京都青梅市に開設された明星大学日本文化学部生活芸術学科の助教授として勤務。その後、東京都八王子市の東京純心女子大学芸術文化学科教授となる。2009年に府中市美術館長、15年から翌年まで群馬県立近代美術館長を務めた。
 その生涯において数多くの西洋美術史、欧米の美術館をめぐる啓蒙書、ガイドブックを執筆したが、本領は山梨県立美術館学芸員の時代から取り組んでいたジャン・フランソア・ミレーに関する研究であった。その成果は、ミレーを中心とする各種展覧会の企画監修に生かされたと同時に、長年にわたり取り組んでいたアルフレッド・サンスィエ著『ミレーの生涯』(角川ソフィア文庫、2014年)の翻訳監修と、『「農民画家」ミレーの真実』(NHK出版新書、2014年)に結実した。なお、主要な著作は下記のとおりである。
主要著書:
『西洋名画の謎-ミステリー・ギャラリー』(小学館、1991年)
『美術館学入門』(明星大学出版部、1993年)(新版、2005年)
『バルビゾン派』(世界美術双書)(東信堂、1993年)
『美術の森の散歩道-マイ・ギャラリートーク』(小学館ライブラリー、1994年)
『マイ・ギャラリートーク 美楽極楽のこころ』(小学館ライブラリー、1998年)
『フランス美術鑑賞紀行<1>パリ編(美術の旅ガイド)』(美術出版社、1998年)
『フランス美術鑑賞紀行<2>パリ近郊と南仏編(美術の旅ガイド)』(美術出版社、1998年)
『世界の博物館 謎の収集』(プレイブックス・インテリジェンス)(青春出版社、2005年)
『カラー版 聖書の名画を楽しく読む』(中経出版、2007年)
『カラー版 ギリシャ神話の名画を楽しく読む』(中経出版、2007年)
『絵画の見方・楽しみ方-巨匠の代表作でわかる』(日本文芸社、2008年)
『聖書の名画はなぜこんなに面白いのか』(中経出版、2010年)
『ギリシャ神話の名画はなぜこんなに面白いのか』(中経出版、2010年)
『ルーヴルの名画はなぜこんなに面白いのか』(中経出版、2011年)
『印象派の名画はなぜこんなに面白いのか』(中経出版、2012年)
『ルネサンスの名画はなぜこんなに面白いのか』(中経出版、2013年)
『ミレーの名画はなぜこんなに面白いのか』(中経出版、2014年)
『「農民画家」ミレーの真実』(NHK出版新書、2014年)
アルフレッド・サンスィエ著、井出洋一郎監訳『ミレーの生涯』(角川ソフィア文庫、2014年)
『名画のネコはなんでも知っている』(エクスナレッジ、2015年)
『知れば知るほど面白い聖書の“名画”』(KADOKAWA、2016年)

出 典:『日本美術年鑑』平成29年版(558頁)
登録日:2019年10月17日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「井出洋一郎」『日本美術年鑑』平成29年版(558頁)
例)「井出洋一郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/818851.html(閲覧日 2024-03-29)

外部サイトを探す
to page top