金澤弘

没年月日:2016/05/07
分野:, (学)
読み:かなざわひろし

 京都国立博物館名誉館員、および元京都造形芸術大学教授の金澤弘は、5月7日に死去した。享年81。
 金澤は1935(昭和10)年、大阪市に生まれた。61年、慶応義塾大学大学院修士課程史学科を修了し、同年より、京都国立博物館に勤務。87年から同館学芸課長を務めた。1995(平成7)年に同館を退官し、京都造形芸術大学芸術学科教授となり、2005年まで教鞭をとった。また、島根県文化財保護委員、仏教美術研究記念上野財団理事、頴川美術館理事、茶の湯文化学会理事をつとめた。
 京都国立博物館では、「室町時代美術」展(1968年)、「中世障屏画」展(1970年)において、15世紀水墨画の画題、画派、画風、受容について多角的調査を行い、その成果を展観した。「日本の肖像」展(1978年)では頂相について、「禅の美術」展(1981年)では禅余画と詩画軸について論じ、「花鳥の美」展(1982年)では水墨花鳥画の作画理念を、「写意から装飾への変化」として展観した。また、至文堂より刊行の『日本の美術』シリーズでは、『初期水墨画』『室町絵画』『水墨画―如拙・周文・宗湛』(1972、1983、1994年)を著し、初期水墨画の成立と展開を詳述した。その業績は、室町絵画についての幅広い作品調査にもとづく優れた分析によるものであった。なかでも、『雪舟』(ブック・オブ・ブックス14、小学館、1976年)において、雪舟の生涯と作品を丹念に追求し、拙宗等楊と雪舟の同人説を否定した。
 その他、共著に、『華厳宗祖師絵巻』(中央公論社、1978年)、Zen―Meister der Meditation in Bildern und Schriften (Museum Rietberg, Zurich, 1993)、『雪舟の芸術・水墨画論集』(秀作社出版、2002年)などがあり、単著に、『日本美術絵画全集 可翁・明兆』(集英社、1977年)、『日本美術全集 金閣・銀閣』(学習研究社、1979年)、『花鳥画の世界 水墨の花と鳥』(学習研究社、1982年)などがある。
 また、室町水墨画を中心に、「長福寺蔵・清信筆 瀟湘八景図について」(『MUSEUM』146、1963年)、「旧養徳院襖絵について」(『美術史』55、1964年)、「相阿弥筆 瀟湘八景図(大仙院)」(『國華』886、1966年)、「雪舟筆天橋立図とその周辺」(『哲学』53、1968年)、「如拙・周文とさまざまの画派と画風」(『水墨美術大系』6、講談社、1974年)、「明兆とその周辺」(『水墨美術大系』5、講談社、1975年)、「琴棋書画図の展開」(『屏風絵集成』2、講談社、1980年)、「白衣観音図の展開」(『大和文華』68、1981年)、「瀟湘八景図の展開」(『茶道聚錦』9、小学館、1984年)、「慕帰絵の画風と構成」(『続日本絵巻大成』4、中央公論社、1985年)、「富岡鉄斎筆 蓬莱仙境図・武陵桃源図屏風」(『國華』1250、1999年)など、多数の論考をのこした。

出 典:『日本美術年鑑』平成29年版(542頁)
登録日:2019年10月17日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「金澤弘」『日本美術年鑑』平成29年版(542頁)
例)「金澤弘 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/818731.html(閲覧日 2024-04-25)
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