ジョン・マックス・ローゼンフィールド

没年月日:2013/12/16
分野:, (学)
読み:JOHN MAXROSENFIELD Ⅲ

 ハーバード大学名誉教授で、日本美術史研究者のジョン・マックス・ローゼンフィールドは、12月16日、脳卒中による合併症のため死去した。享年89。
 1924(大正13)年10月、テキサス州のダラスに生まれる。父のJohn Max Rosenfield Ⅱはコロンビア大学でジャーナリズムを学び、キャリアを積み始めた。母となるClaire Burgerと出会ったのもニューヨークでのことだった。25年にはダラスへもどり、ダラス・モーニング・ニュース文化部の記者を勤め上げた。ローゼンフィールドは、2012(平成24)年に獲得したフリーア・メダルの授賞式におけるスピーチで、両親が博学であり、また活動的であったことは幸運だったと述懐している。
 高校時代は画家となることを志して、アメリカ中西部の風景を描いていたという。テキサス大学に入学すると絵画を学んだが、41年にアメリカが第2次世界大戦に参戦すると、画家への志は妨げられることになった。アメリカ陸軍に召集され、歩兵としての基礎的な訓練を受けた後、カリフォルニア州のバークレーにある陸軍語学学校でタイ語を学んだ(1945年に最初の学士号を取得)。43年、陸軍の諜報部員としてインドのムンバイに渡航。第2次大戦が終わるまでの間に、北インド、スリランカ、ミャンマー、タイなどのアジアの国々に出征した。
 戦後、テキサスに戻ると、南メソジスト大学で芸術学を修めて47年に2つめの学士号を獲得。48年にはElla Ruth Hopperと結婚、アイオワ大学美術史学の修士課程に入学。アイオワ大学在学中の50年に再び応召、朝鮮戦争のために日本と韓国に赴いた。その頃にはプロの画家になるよりも、従軍中にふれたアジア美術に魅了されるようになっていた。
 54年、ハーバード大学博士課程に進学し、東アジア美術を専門とするBenjamin Rowlandに師事した。2年後にはヨーロッパを経由して陸路でインドに渡航、インドの仏教美術を学び始める。博士論文は北インドで発掘されたクシャーン朝の王侯肖像彫刻をテーマとしたもので、59年に完成。67年には、カリフォルニア大学出版よりThe Dynastic Arts of the Kushans [クシャーン王朝の美術]として出版された。
 62年、生きた信仰としての仏教を経験したいと願っていたローゼンフィールドは、American Council of Leaned Societiesの助成金を得て、家族とともに京都に移り住み、約2年半の間滞在した。
 65年、ハーバード大学に赴任。日本美術に関しての根幹となる学術プログラム作成の責務を負った。71年にはアビー・オルドリッチ・ロックフェラー教授に任命。在任中はアジア美術のキュレーター、学部長を歴任した。82年から85年の3年間は、フォッグ美術館(現、ハーバード大学美術館)のアートディレクターを務めた。
 ローゼンフィールドは、学生に実作品を学ばせなければならないとしてフォッグ美術館に収蔵するコレクションを求めた。大学院生だけではなく学部生にも収蔵庫におさめられた作品に触れるようにうながし、展覧会準備のアシスタントもつとめさせた。また日本美術に関する情報を増やすことが自らの使命だと認識しており、月刊誌『日本の美術』(至文堂、後にぎょうせいより出版)の英訳を監修、翻訳はハーバード大学博士課程在籍の学生に担当させた。彼は、学生が作品に直に触れ、また日本における日本美術史研究の一端を直に触れさせようと実践的な教育をほどこすとともに、情熱をもって指導にあたったのだった。60年代以降のアメリカにおける日本美術史学の学問的な基礎を形づくった一人と位置づけられる。
 長年にわたる日本美術史研究への貢献によって数々の賞を受賞。主要なものに、85年アジアン・カルチュラル・カウンシルのJohn D. Rockfeller 3rd賞、88年旭日章、2001年山片蟠桃賞、12年フリーアメダル賞受賞が挙げられる。
 91年6月退職、ハーバード大学東洋美術史名誉教授となる。亡くなるまでハーバード大学の学術的コミュニティで精力的に活動を続けた。最晩年の12年、フリーアメダル授賞式では近世の仏師湛海に関する研究の一端を披露した。この湛海研究が彼の最後の研究となった。彼の死から3年後の2016年、Preserving the Dharma: Hozan Tankai and Japanese Buddhist Art of the Early Modern Era として刊行。その他、主な著作等に以下のようなものがある。
 Japanese Arts of the Heian Period, 794-1185, Asia Society, 1967
 John M. Rosenfield, Shujiro Shimada, Traditions of Japanese Art, Fogg Art Museum, Harvard University, 1970
 Yoshiaki Shimizu, John Rosenfield, Master of Japanese Calligraphy 8th-19th Century, Frederic C Beil, 1985
 Mynah Birds and Flying Rocks: Word and Image in the Art of Yosa Buson(Franklin D. Murphy Lectures, X VIII), Spencer Museum of Art, 2004
 Portraits of Chogen: The Transformaiton of Buddhist Art in Early Medieval Japan (Japanese Visual Culture), Brill Academic Pub, 2012
 没後刊行された追悼文に Samuel C. Morse “Remembering John Max Rosenfield”, Impression 36,2015などがある。
(https://www.asia.si.edu/research/freer-medal/booklets/freer-medal-2012.pdf)

出 典:『日本美術年鑑』平成26年版(473-474頁)
登録日:2016年09月05日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「ジョン・マックス・ローゼンフィールド」『日本美術年鑑』平成26年版(473-474頁)
例)「ジョン・マックス・ローゼンフィールド 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/236771.html(閲覧日 2024-04-26)
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