川上貢

没年月日:2012/03/20
分野:, (学)
読み:かわかみみつぐ

 建築史家で京都大学名誉教授の川上貢は3月20日午前10時45分、大阪府高槻市内の病院で肺炎のため死去した。享年87。
 1924(大正13)年9月6日大阪府に生まれる。1946(昭和21)年京都帝国大学工学部建築学科に入学。49年に卒業後、同大学院の特別研究生として村田治郎に師事、53年に京都大学工学部講師、55年に助教授、66年に同教授となる。88年に定年退官し、同大学名誉教授。同年より1990(平成2)年まで福井大学工学部教授、同年より95年まで大阪産業大学工学部教授を歴任。
 京大助教授時代の58年に、「日本中世住宅の研究」にて同大より工学博士号授与、翌59年には同論文に対して日本建築学会賞(論文賞)を受賞した。
 近世の書院造より以前の、実物遺構が現存しない鎌倉・室町時代の住宅建築の平面形式とその空間の具体的使われ方を歴史史料に現れる記述の分析を通じて解明するとともに、寝殿造から書院造に至る支配階級の住宅の変遷過程を初めて提示した学位論文は、『日本中世住宅の研究』(墨水書房、1967年)として公刊され、建築史学にとどまらず関連学会からも基本文献として評価されることとなった。実物遺構の調査に基づく研究としては、学部生当時から禅宗寺院の塔頭建築の意義と構成の考究に力を注ぎ、その成果は『禅院の建築』(河原書店、1968年)として刊行されている。
 後年には、近世や近代の建築調査を主導することを通じて、多くの建造物の文化財指定、保存に貢献したほか、教育や学会活動の面でも大いに活躍した。76年から94年まで文化庁文化財保護審議会の専門委員を務めたほか、京都府をはじめとする地方自治体でも文化財保護審議会委員として文化財保護行政に助言した。さらに、日本建築学会の理事、監事や、87年より89年の間は建築史学会会長を務め、学会の発展に貢献した。94年より財団法人京都市埋蔵文化財研究所所長として、また98年より2006年まで財団法人建築研究協会理事長として、考古学調査や文化財建造物の保存修理にも指導的役割を果たした。これらの業績により03年に旭日中綬章を受章、10年には「日本建築史に関する研究・教育と建築文化遺産保存活動の功績」にて日本建築学会大賞を受賞した。
 上記以外の主な著作に、『室町建築』(日本の美術199 至文堂、1982年)、『近世建築の生産組織と技術』(編著 中央公論美術出版、1984年)、『建築指図を読む』(中央公論美術出版、1988年)、『近世上方大工の組・仲間』(思文閣出版、1997年)などがあり、調査報告書の執筆や編集も数多く担当している。

出 典:『日本美術年鑑』平成25年版(411頁)
登録日:2015年12月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「川上貢」『日本美術年鑑』平成25年版(411頁)
例)「川上貢 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/204389.html(閲覧日 2024-12-05)

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