柳宗理

没年月日:2011/12/25
分野:, (デ)
読み:やなぎそうり

 工業デザイナーで、文化功労者の柳宗理は、12月25日、肺炎のため死去した。享年96。
 1915(大正4)年6月29日、民芸運動の創始者の柳宗悦と声楽家の兼子の第一子として東京市原宿に生まれた。本名は宗理(むねみち)。1935(昭和10)年東京美術学校洋画科に入学、南薫造教室に所属するが、バウハウスで学んだ水谷武彦の講義を聞き、また、ル・コルビュジエの思想に感銘を受けデザイナーを志す。40年社団法人日本輸出工芸連合会(商工省の外郭団体)の嘱託となる。商工省貿易局の招聘により、日本の輸出工芸の指導のために来日したフランス人デザイナーのシャルロット・ペリアンのアシスタントとして日本各地の地場産業の視察に同行、その後のデザインへの取り組みに影響を受ける。42年坂倉準三建築研究所研究員となる(~1945年)。43年陸軍報道部宣伝班員としてフィリピンに渡る。
 46年フィリピンから帰国し、工業デザインに着手。48年松村硬質陶器のために手がけたテーブルウェア「硬質陶器シリーズ」が工業デザイナーとしてデビューとなる。50年柳インダストリアルデザイン研究所を設立。52年第1回新日本工業デザインコンクール(毎日新聞社主催)で「レコードプレーヤー」(日本コロンビア)が第一席となる。同年、日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)設立に参加。53年女子美術大学講師となる(~1967年)。同年4月財団法人柳工業デザイン研究会設立。同年10月国際デザインコミッティー(現在の日本デザインコミッティー)が発足し会員となる。54年ポリエステルの「スタッキング・スツール(エレファント・スツール)」(コトブキ)をデザイン。55年金沢美術工芸大学産業美術学科教授となる(1967年からは嘱託、1997年からは特別客員教授)。56年6月第1回柳工業デザイン研究会展(銀座松屋)開催、成形合板による「バタフライ・スツール」(天童木工)を発表する。同年6月第6回アスペン国際デザイン会議(アメリカ・コロラド州)に参加。57年7月第11回ミラノ・トリエンナーレに「バタフライ・スツール」、「白磁土瓶」などを出品し、インダストリアル・デザイン金賞を受賞。60年5月世界デザイン会議が東京で開催され実行委員となる。同年、「柳宗理陶器のデザイン展」(銀座松屋)開催。61年西ドイツのカッセル・デザイン専門学校教授として招聘され、62年まで滞在。64年東京オリンピックの「トーチホルダー」などをデザイン。65年「デザイナーのタッチしないデザイン ANONYMOUS DESIGN」展(銀座松屋)を企画。66年世界デザイン会議(フィンランド)に日本代表として参加。68年「柳宗理歩道橋計画案展」(銀座松屋)開催。72年札幌オリンピックの「聖火台」、「トーチホルダー」などをデザイン。75年「柳宗理のデザイン展」(銀座松屋)、「ストリートファニチャー展」(銀座松屋)開催。77年12月日本民藝館館長となり、翌78年1月には日本民藝協会会長となる。80年6月「柳宗理:デザイナー・作品・1950-80」展(ミラノ市近代美術館、イタリア)開催。83年6月、「柳宗理デザイン展 1950‐1983」(イタリア文化会館、東京)開催。88年8月、「柳宗理Sori Yanagi’s Works and Philosophy」展(有楽町西武クリエイターズ・ギャラリー、東京)開催。1998(平成10)年4月、「柳宗理 戦後デザインのパイオニア」展(セゾン美術館、東京)開催。2002年11月、文化功労者となる。03年8月「柳宗理デザイン展・金沢 うまれるかたち」(金沢市民芸術村)開催。07年1月「柳宗理 生活のなかのデザイン」展(東京国立近代美術館)開催。08年英国王立芸術協会より、ロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(Hon RDI)の称号を授与される。
 戦後日本の工業デザインの基礎を作った工業デザイナーの草分け的存在であり、テーブルウェアや台所用品などの生活用具から、家具、ベンチなどのストリートファニチャー、歩道橋、高速道路の防音壁、さらには、札幌オリンピックの聖火台など、幅広い領域で活動した。代表作「バタフライ・スツール」に見られるように、日本の伝統的な造形感覚とモダンデザインの合理性とを結びつけ、無駄なデザインを省いた純粋な形の中に、手仕事のぬくもりや日本の風土性を感じさせるデザインは国内外で高く評価された。「デザインの至上目的は人類の用途の為にということである」「本当の美は生まれるもので、つくり出すものではない」という言葉からもうかがえるように健全な人間社会のあるべき姿というものを追求する思想性を備えた工業デザイナーだった。デザインに関する文章も多く、著書に『デザイン 柳宗理の作品と考え』(用美社、1983年)、『柳宗理 エッセイ』(平凡社、2003年)などがある。

出 典:『日本美術年鑑』平成24年版(444頁)
登録日:2015年12月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「柳宗理」『日本美術年鑑』平成24年版(444頁)
例)「柳宗理 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/204378.html(閲覧日 2024-04-25)

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