山野勝次

没年月日:2019/10/29
分野:, (学)
読み:やまのかつじ

 保存科学分野(応用昆虫学)の研究者である山野勝次は10月29日、自宅にて死去した。享年85。
 1934(昭和9)年6月18日に生まれる。57年宮崎大学農学部を卒業後、同年、日本国有鉄道鉄道技術研究所、鳥栖白蟻実験所に就職。その後、79年以降、財団法人文化財虫害研究所評議員、87年同常務理事。同年より、東京国立文化財研究所保存科学部生物研究室、調査研究員を併任。また、社団法人日本しろあり対策協会理事、日本家屋害虫学会評議員等を歴任する。
 日本国有鉄道時代から、白蟻をはじめとする有害生物の生態および防除に関する研究に従事し、文化財虫害研究所、東京国立文化財研究所でも文化財の虫害の調査、被害の対策に生涯を捧げ、多大な功績を残した。文化財を守り伝えていく真摯な姿勢とその温かく誠実な人柄から、多くの親交があり慕われた。
 農学博士(1981年、東京大学)。日本家屋害虫学会賞、日本国有鉄道総裁表彰(功績賞)、国土交通大臣表彰、日本家屋害虫学会森八郎賞等を受賞。また2007(平成19)年の文化財虫害研究所の第1回読売あをによし賞受賞にも大きく貢献した。
 主要な研究業績は以下の通り。
<編著書>
『建築昆虫記』(相模書房、1974年)
『しろあり詳説』(第2章被害と探知)(日本しろあり対策協会編、1980年)
『家屋害虫』「等翅目,家屋害虫の形態と生態,シロアリの防除」(日本家屋害虫学会編、井上書院、1984年)
『防蟻・防腐ダイジェスト』「シロアリの生態と被害」(日本しろあり対策協会編、文唱堂、1985年)
『生物大図鑑』「-昆虫-(シロアリ目(等翅目))」(世界文化社、1985年)
『文化財の虫菌害と保存対策』「等翅目,シロアリの防除」(文化財虫害研究所編、白橋印刷所、1987年)
『しろあり及び腐朽防除施工の基礎知識(シロアリの生態と被害)』(日本しろあり対策協会編、1988年)
『防虫・防腐用語事典』(日本しろあり対策協会、白橋印刷所、1988年)
『家屋害虫(2)』「イエシロアリの探餌行動に関する実験,イエシロアリの加害習性および物理的防除,ゴム材料の耐蟻性ならびに耐菌性に関する研究,木造建築物のシロアリ被害,シロアリの群飛に関する調査,ダイアジノン・マイクロカプセル剤による新幹線ゴキブリの防除」(日本家屋害虫学会編、井上書院、1988年)
『暗黒の住者-シロアリ研究の手引-』(訳書)(キャッツ環境科学研究所、1990年)
『文化財・保存科学の原理』「文化財の害虫とその防除」(丹青社、1990年)
『害虫とカビから住まいを守る-その基礎知識と建築的工夫-』(神山幸弘と共著、彰国社、1991年)
『文化財の虫菌害防除概説』(共著、文化財虫害研究所編、1991年)
『美術工芸品の保存と保管』(共著、フジ・テクノシステム、1994年)
『家屋害虫事典』(共著、日本家屋害虫学会編、井上書院、1995年)
『文化財の害虫-被害・生態・防除-』(写真・編集)(文化財虫害研究所編、1995年)
『ネズミ・害虫の衛生管理』(共著、フジ・テクノシステム、1999年)
『シロアリと防除対策』 (共著、日本しろあり対策協会編、2000年)
『文化財害虫事典』(共著、東京文化財研究所編、クバプロ、2001年)
『文化財の虫菌害と防除の基礎知識』(共著、文化財虫害研究所編、2002年)
『生活害虫の事典』(共著、朝倉書店、2003年)
『写真でわかるシロアリの被害・生態・調査』(文化財虫害研究所、2005年)
『文化財の燻蒸処理標準仕様書(2007年改訂版)』(文化財虫害研究所、2007年)

<研究報文>
“Studies on Biophysical Control of Termites(Reports2and3combined)”T.Kikuchi,M.Nakayama,T.Oi,T.Asano,T.Imai and K.Yamano,Quarterly Reports(Railway Technical Research Institute,JNR,Vol.7,No.1,1966)
「土佐原駅構内信号用ケーブルのシロアリ被害調査」(『鉄道技術研究所速報』 67-214、1967年)
「Sonic Detectorによるシロアリの巣の探知」(『しろあり』15、日本しろあり対策協会、1971年)
「東北地方のしろあり被害について」山野勝次・八木舜治・今井忠重(『しろあり』18、日本しろあり対策協会、1973年)
“Prevention of Rat Damage to Rubber and Plastic Insulated Cable with Use of Repellents” K.Yamano and S.Yagi,Quarterly Reports(Railway Technical Research Institute,JNR,Vol.17,No.1,1976)
「ダイアジノン・マイクロカプセル剤による新幹線のゴキプリの防除」(『家屋害虫』27・28、日本家屋害虫学会、1986年)
「東京都板橋区で発見されたアメリカカンザイシロアについて」(『家屋害虫』12-2、日本家屋害虫学会、1990年)
三浦定俊・木川りか・山野勝次「臭化メチルの使用規制と博物館・美術館等における防虫防黴対策の今後」(『月刊文化財』414、第1法規出版、1998年)
木川りか・宮澤淑子・山野勝次・三浦定俊・後出秀聡・木村広・富田文四郎「低酸素濃度および二酸化炭素による殺虫法;日本の文化財害虫についての実用的処理条件の策定」(『文化財保存修復学会誌』45、文化財保存修復学会、2001年)
山野勝次・木川りか・三浦定俊「東大寺法華堂・戒壇堂におけるアナバチ類の被害とピレスロイド樹脂蒸散剤による防除対策」(『文化財保存修復学会誌』45、文化財保存修復学会、2001年)
小峰幸夫・原田正彦・野村牧人・木川りか・山野勝次・藤井義久・藤原裕子・川野邊渉「日光山輪王寺本堂におけるオオナガシバンムシの発生状況に関する調査について」(『保存科学』49、東京文化財研究所、2010年)

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(501-502頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「山野勝次」『日本美術年鑑』令和2年版(501-502頁)
例)「山野勝次 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2041101.html(閲覧日 2024-04-25)

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