新藤武弘

没年月日:1996/07/21
分野:, (学)
読み:しんどうたけひろ

 跡見学園女子大学教授で東洋美術史研究者の新藤武弘は、7月21日午後10時、多臓器不全のため千葉県君津市の玄々堂君津病院で死去した。享年62。昭和9年(1934)4月25日、東京に生まれる。同35年(1960)3月、東京大学文学部美学美術史学科を卒業、大阪市立博物館の学芸員となり、翌年京都国立博物館学芸課文部技官、その後、同38年ハーヴァード燕京協会奨学金でアメリカへ留学、ハーヴァード大学でマックス・ラー教授に師事、同41年6月同大学大学院修士課程を修了。翌年、サンフランシスコ・アジア美術館に勤務。同43年には大阪万国博美術館副参事を務める。同49年4月に跡見学園女子大学文学部文化学科の専任講師となり、52年4月に助教授、56年4月から教授。この間、昭和51年(1976)4月から60年3月までは、新潮社嘱託として、現在最も基本的な美術辞典である『新潮世界美術辞典』の編集に関わった。研究対象は幅広く、巨然から石涛・八大山人までについての論攷がある。専門の中国絵画史以外にも、蕪村についての研究があり、詩と歌・中国と日本・夢と現実など様々なものを淵源とするイメージが、俳諧と絵画の中に自在に立ち現れる様を描いている。その視野には、異なるメヂィア・異なる文化の中でのイメージの往来というより大きな問題があった。英語・中国語に堪能で、マイケル・サリバンやジェームス・ケーヒルの主著の翻訳があり、米国・中国でも多彩な研究活動を行った。
主要研究業績
『山水画とは何か-中国の自然と芸術』福武書店 1989年
「八大山人と石涛の友情について」『跡見学園女子大学紀要』9、1976年
「巨然について-北宋初期山水画における南北の邂逅」『跡見学園女子大学紀要』17、1984年
「都市の絵画-清明上河図を中心として」『跡見学園女子大学紀要』19、1986年
「石涛と≪廬山観瀑図≫」『跡見学園女子大学紀要』21、1988年
「蕪村小考-計画論的-考察」『日本絵画史の研究』1989年
翻訳
マイケル・サリバン『中国美術史』新潮社 1973年
ジェームズ・ケーヒル「中国絵画における奇想と幻想」『国華』978~980、1975年
ジェームズ・ケーヒル『江山四季-中国元代の絵画』明治書院 1980年
王概編『新訳芥子園画伝』日貿出版社 1985年
ジェームズ・ケーヒル『江岸別意-中国明代初中期の絵画』明治書院 1987年 出 典:『日本美術年鑑』平成9年版(350頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月25日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「新藤武弘」『日本美術年鑑』平成9年版(350頁)
例)「新藤武弘 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10693.html(閲覧日 2024-04-20)
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