菅沼貞三

没年月日:1993/02/20
分野:, (学)

 常葉美術館名誉館長、美術史家菅沼貞三は、心不全のため静岡県藤枝市立志太総合病院で死去した。享年92。明治33年12月11日静岡県小笠郡に生まれる。大正15年3月慶応義塾大学文学部美学美術史科を卒業し、同年11月より昭和3年4月まで京都帝国大学附属図書館嘱託勤務。昭和5年1月には開設をひかえた、東京国立文化財研究所の前身である帝国美術院附属美術研究所の職員に採用され、同年6月より助手を勤めた。その後、嘱託を経て同18年4月美術研究所所員に任官した。同23年12月に研究所を退官するまで機関誌『美術研究』に健筆を揮い、同7年1月の創刊号より数多くの研究成果を公表した。退官後、静岡大学教育学部(同26年)、愛知大学文学部(同28年)非常勤講師などを経て、同36年4月慶応義塾大学文学部助教授、翌37年4月同大学文学部教授となり、同44年3月定年退職した。この間、同30年6月より同43年まで大和文華館研究員嘱託となり、同館の刊行する『大和文華』誌上に多くの論考を発表した。同45年4月愛知学院大学教授。同48年4月には常葉学園短期大学客員教授となって、同53年3月愛知学院大学を定年退職すると翌4月より常葉美術館名誉館長の職に就いた。また、昭和35年慶応義塾大学より文学博士の学位を得、静岡県文化財保護審議会委員(同27年3月より58年12月)、東京都文化財専門委員(同43年8月より46年7月)を勤めた。
 美術研究所時代より文人画を中心に日本の近世絵画の研究を進めた。とくに郷里と縁の深い渡辺崋山の研究の基礎を確立して大きな功績をあげた。没後150年を記念して『定本・渡辺崋山』(全3巻、郷土出版社、平成3年)が常葉美術館の編集によって刊行されたが、崋山研究の基礎資料を集大成した本書に監修者・執筆者として参画したのが菅沼の最後の大きな仕事になった。
主要論文
「大雅の二作解説」(「三田文学」16-10、昭和4)
「崋山の花鳥画」(「三田文学」17-11、昭和5)
「狩野修理筆絵馬図-京都・妙法院蔵」(「美術研究」1、昭和7)
「海北友松筆松竹梅図-京都・禅居庵蔵」(「美術研究」5、昭和7)
「阿弥陀如来像-東京・八橋徳次郎氏蔵」(「美術研究」6、昭和7)
「狩野探幽筆草木花写生図-東京帝室博物館蔵」(「美術研究」8、昭和7)
「須菩提像・阿修羅像-奈良・興福寺蔵」(「美術研究」11、昭和7)
「尾形光琳筆梅図-東京・津軽義隆氏蔵」(「美術研究」14、昭和8)
「扇面古写経-滋賀・西教寺蔵」(「美術研究」16、昭和8)
「崋山の肖像画」(「美術研究」18、昭和8)
「なよ竹物語絵巻に就て」(「美術研究」24、昭和8)
「長春の作品に就て」(「美術研究」28、昭和9)
「金銅仏四躯-大阪・観心寺蔵」(「美術研究」32、昭和9)
「応挙筆写生図巻-京都・西村総左衛門氏蔵」(「美術研究」34、昭和9)
「正宗寺の蘆雪筆襖絵」(「美術研究」36、昭和9)
「観蘭亭の障壁画」(「美術研究」39、昭和10)
「金地院茶室の襖絵」(「美術研究」44、昭和10)
「文晁筆公余探勝図に就て」(「美術研究」47、昭和10)
「上杉重房像-神奈川・明月院蔵」(「美術研究」48、昭和10)
「蕭白筆柳下鬼女図-東京美術学校蔵」(「美術研究」53、昭和11)
「等伯筆猿猴図-京都・龍泉庵蔵」(「美術研究」56、昭和11)
「法然上人像-茨城・常福寺蔵」(「美術研究」57、昭和11)
「椿山筆中戸祐喜像-神奈川・鈴木八重氏蔵」(「美術研究」62、昭和12)
「舞踏図-東京・梅原龍三郎氏蔵」(「美術研究」63、昭和12)
「崋山筆于公高門図-新潟・中野忠太郎氏蔵」(「美術研究」64、昭和12)
「椿山筆高久靄厓像-静岡・大谷喜太郎氏蔵)(「美術研究」65、昭和12)
「弥勒菩薩像-大阪・野中寺蔵」(「美術研究」65、昭和12)
「桜間清厓」(「美術研究」67、昭和12)
「崋山の肖像画法に就て」(「南画鑑賞」6-7、昭和12)
「大雅の三丘紀行」(「美術研究」73、昭和13)
「光琳筆藤原信盈像に就て」(「美術研究」76、昭和13)
「崋山筆滝沢琴嶺像」(「美術研究」83、昭和13)
「光琳筆肖像画余談」(「星岡」97、昭和13)
「崋山筆虫魚帖」(「美術研究」86、昭和14)
「後藤祐乗画像を中心として」(「美術研究」95、昭和14)
「椿山の肖像画」(「美術研究」100、昭和15)
「崋山晩期の作品」(「美術研究」107、昭和15)
「崋山の守困日歴(公刊)」(「美術研究」107、昭和15)
「崋山覚書」(「塔影」17-1、昭和16)
「崋山の特質」(「東美」7、昭和16)
「崋山の守困日歴1~4」(「三田評論」520~523、昭和16)
「続崋山の肖像画」(「美術研究」114、昭和16)
「崋山の四州真景」(「美術研究」120、昭和16)
「田原藩御日記抄について」(「南画鑑賞」11-7、昭和17)
「崋山初期の作品」(「美術研究」129、昭和18)
「崋山中期の作品」(「美術研究」132、昭和18)
「崋山とその弟子椿山」(「清閑」16、昭和18)
「光琳肖像考」(「芸文研究」1、昭和26)
「光琳筆中村内蔵助像」(「大和文華」5、昭和27)
「崋山の四州真景図」(「MUSEUM」28、昭和28)
「崋山の人物素描画」(「大和文華」12、昭和28)
「椿山の山海奇賞」(「国華」758、昭和30)
「崋山筆証如上人画像」(「大和文華」17、昭和30)
「北小路大膳大夫像」(「大和文華」18、昭和31)
「婦人像解説」(「大和文華」24、昭和32)
「黄檗の大雅」(「南画研究」2-3、昭和33)
「禅宗画の本質」(「史学」30-4、昭和33)
「松平定吉画像」(「大和文華」26、昭和33)
「植松家の応挙と大雅」(「大和文華」30、昭和34)
「絵馬風俗図解説」(「大和文華」32、昭和35)
「崋山の于公高門図稿」(「三彩」124、昭和35)
「駿牛図解説田中親美氏蔵」(「大和文華」35、昭和36)
「十二月風俗図考」(「大和文華」37、昭和37)
「大雅画禅の説」(「哲学」三田哲学会、46、昭和40)
「自性寺の大雅堂」(「墨美」154、昭和40)
「大雅研究序説」(「美学」65、昭和41)
「山陽著賛の木米作画」(「大和文華」47、昭和42)
「文人画の研究」(「美学」75、昭和43)
「竹田の亦復一楽帖」(「哲学」三田哲学会、53、昭和43)
「竹田の船窓小戯帖」(「芸文研究」29、昭和45)
「崋山筆毛武遊記図巻-桐生付近素描図巻-」(「大和文華」73、昭和60)
「大雅の「三丘紀行」-三老遊境想像にするにたえたり」(「墨」60、昭和61)
主要著書
『崋山の研究』座右宝刊行会、昭和22(木耳社より複刊、昭和44)
『崋山』中日新聞社、昭和37
『池大雅-人と芸術』二玄社、昭和52
『渡邊崋山』(日本の美術162)至文堂、昭和54
『渡邊崋山-人と芸術』二玄社、昭和57

出 典:『日本美術年鑑』平成6年版(318-319頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2016年08月09日 (更新履歴)
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