松枝一

没年月日:1990/08/22
分野:, (工,染)
読み:まつえだひとし

 国の重要無形文化財に指定されている久留米がすりの技術保持者、松枝一は、8月22日午前4時20分、腎不全のため福岡県三潴郡の十連病院で死去した。享年83。明治40(1907)年8月15日、福岡県三潴郡に生まれる。大正14(1925)年柳川高等女学校を卒業し、家業の久留米絣の制作を手助い始める。昭和4(1929)年1月、代々久留米絣を家業とした松枝家に嫁し、その後は夫玉記と共に技術の継承、修得につとめた。戦中の昭和18年、綿糸割当て停止等の物資統制の強まるなかで松枝家は織屋を廃業し、一時北九州で青果業を営むが、同23年絣製造を再開する。同32年久留米絣の技術が国の重要無形文化財に認定され、夫玉記と共にその技術保持者となる。特に手括り、手織りの技術が認められた。同45年久留米絣技術保持者代表となり、同51年2月、重要無形文化財指定が個人から団体である技術保存会に移るまで、技術保持者代表の位置にあった。手括り、手織りによる大柄物を得意とし、伝統的な技術をいかしながら、現代感覚をもりこんで久留米絣に新生面を開いた。

出 典:『日本美術年鑑』平成3年版(311頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月26日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「松枝一」『日本美術年鑑』平成3年版(311頁)
例)「松枝一 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10306.html(閲覧日 2024-04-24)
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