高橋誠一郎

没年月日:1982/02/09
分野:, (美,関)

文化勲章受章者で、昭和23年以来30年間日本芸術院長をつとめた経済学者高橋誠一郎は、2月9日肺炎のため東京都新宿区の慶応病院で死去した。享年97。芸術への造詣が深く、とくに浮世絵の個人コレクターとしては第一人者であり、浮世絵研究家でもあった高橋は、明治17(1884)年5月9日新潟の廻船問屋の一人息子として生まれた。横浜での少年時代から、すでに絵草紙屋で清親や芳年の錦絵を見とれていたという。同41年慶応義塾大学政治科を卒業、英国留学後、大正3年母校の理財科教授に就任、経済学部長などを経て、昭和19年名誉教授となった。戦後間もなく、慶応義塾長事務取扱いとして難局を処理したのち、同22年の第一次吉田内閣の文相に就任、戦後教育の骨格づくりに尽力した。その後、東京国立博物館長(同23-25年)、日本芸術院長(同23-54年)、文化財保護委員会委員長(同25-31年)、映倫管理委員長(同32-53年)、国立劇場会長(同41-52年)など文化・学術面の要職を歴任、また、同37年から没年まで日本浮世絵協会会長もつとめる。同37年文化功労者に選ばれ、同48年勲一等旭日大綬章を受章、同54年には文化勲章を受けた。この間、情熱を注いで収集した浮世絵は、写楽の「市川鰕蔵の竹村定之進」、北斎の「凱風快晴」、歌麿の「高島おひさ」など多くの逸品を含む総計六千三百余点にのぼり、これらは一括して没後慶応大学図書館へ入った。『浮世絵講話』(昭和23)、『浮世絵と経済学』『新修浮世絵二百五十年』(同35)、『浮世絵随想』(同41)などの浮世絵に関する著述があり、また、同50年から52年にかけて、『高橋誠一郎コレクション・浮世絵』(全七巻)を刊行した。

出 典:『日本美術年鑑』昭和58年版(266頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「高橋誠一郎」『日本美術年鑑』昭和58年版(266頁)
例)「高橋誠一郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10260.html(閲覧日 2024-03-19)

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