菊地貞夫

没年月日:2017/01/27
分野:, (学)
読み:きくちさだお

 浮世絵研究者の菊地貞夫は1月27日、死去した。享年92。
 1924(大正13)年2月18日、東京・八丁堀に生まれる。立正大学で〓崎宗重に師事し、浮世絵の研究をはじめた。大学卒業後、東京国立博物館に就職し、同館の近藤市太郎のもとで、浮世絵関連の仕事に従事した。『東京国立博物館図版目録 浮世絵版画〓』上巻(1960年)、中巻(1962年)、下巻(1963年)は、編著者名が記載されていないため不明ではあるが、時期的にみて菊地が編集に関わった刊行物であると考えられ、同館所蔵の3926点の浮世絵版画の総目録となっている。1968(昭和43)年主任研究官、79年絵画室長となる。東京国立博物館の展覧会「浮世絵―旧松方コレクションを中心として―」(1984年10月16日~11月25日)はその年度末に退官を控えた菊地が中心となって開催された浮世絵の体系的な展観で、近世初期風俗画をはじめ江戸時代から明治時代までの肉筆画46点、版画663点の合計698点の作品が出陳された。展覧会図録のほか翌年度に豪華本の特別展図録『浮世絵』(東京国立博物館、1986年)も刊行されている。この展覧会で浮世絵の文化的価値を一層高めた功績により、85年に第4回内山晋米寿記念浮世絵奨励賞特別賞を受賞した。東京国立博物館に38年間勤続し、85年に定年退官した後、那須ロイヤル美術館副館長を7年間勤めたほか、85年から6年間国際浮世絵学会の前身、日本浮世絵協会で理事長を務めた。「ボストンで見つかった北斎展―ボストン美術館の版木新発見」(たばこと塩の博物館、1987年1月15日~2月8日ほか6カ所を巡回)ではボストン美術館に所蔵されていたビゲローが購入した版木など527点の調査と展覧会の開催に関わり、同展図録に菊地の論文「ボストン美術館で新発見された北斎の板木について」が掲載されている。著書に『カラーブックス21 浮世絵』(保育社、1963年)、『原色日本の美術17 浮世絵』(小学館、1968年)『日本の美術74 北斎』(至文堂、1972年)、『浮世絵大系5 歌麿』(集英社、1973年)、などがある。また全集類などへの執筆や解説も数多く手がけ、「浮世絵師の〓風」(『日本〓風絵集成14 風俗画―遊楽 誰ヵ袖』講談社、1977年)、「歌麿・栄之の浮世絵」(『在外日本の至宝7 浮世絵』毎日新聞社、1980年)などがある。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(429頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「菊地貞夫」『日本美術年鑑』平成30年版(429頁)
例)「菊地貞夫 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824146.html(閲覧日 2024-04-30)

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