谷口ジロー

没年月日:2017/02/11
分野:, (漫)
読み:たにぐちじろー

 漫画家の谷口ジローは2月11日、多臓器不全で死去した。享年69。
 1947(昭和22)年8月14日、鳥取県に生まれる。本名治郎。66年鳥取県立鳥取商業高校卒業後、会社務めの傍ら漫画を描き続ける。67年上京、石川球太のアシスタントになる。70年「声にならない鳥のうた」(『デイリープログラム』)でデビュー。72年絵本『ぐじゃ ままにたら』(文・桂里歩、自費出版)を発表。74年から集英社の学習漫画「シートン動物記」の作画を4巻分担当。79年、初期の代表作で探偵ものの「事件屋稼業」(原作・関川夏央、『漫画ギャング』)が連載開始、掲載誌休刊後82年『漫画ゴラク』にて再び連載される。80年、ボクシング漫画の傑作「青の戦士」(原作・狩撫麻礼、『ビッグコミックスピリッツ』)を発表。84年の「超戦闘犬ブランカ」は、谷口の動物ものとアクションものの描写力を併せ持つ作品となった。描線を多用する画風からはなれ、中期の傑作となったのが、関川夏央との共作「坊ちゃんの時代」で、87年から『漫画アクション』に連載(単行本全5巻、双葉社)、夏目漱石、森鴎外、石川啄木ら明治の群像が描かれる。同作は国内外で多くの漫画賞を受賞。1994(平成6)年からは後にTV番組にもなった「孤独のグルメ」(原作・久住昌之、『月刊PANjA』)の連載がはじまり、谷口の名は一般にも知られるようになる。さらに「歩く人」(1990年)、「犬を飼う」(1991年)など日常生活の機微を丁寧かつ静謐に描く作品も多くなる。さらに故郷を舞台にした「父の暦」(1994年)、「遥かな町へ」(1998年)などでモチーフを広げていく。2000年発表の「神々の山嶺」(原作・夢枕獏、単行本全5巻、集英社)は、谷口の独断場といっていい山岳もの傑作で、後期の代表作といえよう。90年代半ばからフランス、スペイン、ドイツなど海外での受賞が続き、10年ベルギーで「遥かな町へ」が映画化、12年フランスでインタビュー集が刊行され、14年ルーヴル美術館からの依頼で蔵品の絵画をモチーフにした「千年の翼、百年の夢」を手掛けるなど、谷口の漫画は一挙に国際的になる。16年初の画集『谷口ジロー画集』(小学館)を刊行。17年から18年にかけて、日仏会館ギャラリーと鳥取県立博物館で回顧展が開催された。参考文献として『谷口ジロー 描くよろこび』(〓凡社、2018年)がある。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(432頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「谷口ジロー」『日本美術年鑑』平成30年版(432頁)
例)「谷口ジロー 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824171.html(閲覧日 2024-04-25)

外部サイトを探す
to page top