佐々木静一

没年月日:1997/01/17
分野:, (学)

神奈川県立近代美術館学芸員、多摩美術大学美術学部教授をつとめた日本近代美術史研究者、美術評論家の佐々木静一は1月17日、肺炎のため死亡した。享年73。大正12(1923)年7月3日、大使館勤務であった父の赴任先のポーランド、ワルシャワに生まれる。昭和26(1951)年3月早稲田大学文学部芸術学美術史専攻課程を卒業。在学中は安藤更正に師事した。同年4月、開館を11月にひかえた神奈川県立近代美術館の学芸員となり、東京国立近代美術館に先だつ初めての日本の近代美術館であった同館の初代学芸員として活躍。初代館長村田良策および2代目館長土方定一のもと、多くの展覧会を担当した。同43年同館を退き、多摩美術大学美術学部教授となって以後、画材、美術技法の東西交流を主要なテーマとする「材料学」の研究に取り組んだ。なかでも、青色顔料であるプルシャン・ブルーの流通、洋風油彩技法やガラス絵、泥絵技法の伝搬に興味を持ち、海外調査を行った。また、画法・技法という視点から日本の近代画法を見ることにより、日本的な絵画表現の例としての文人画、特に多くの油彩画家に関心を抱かれた近代文人画に注目し、論考を加えた。平成3(1991)年同大学を定年退官して同名誉教授となった。昭和61年脳梗塞で倒れ、一時、不随となったが再度著作できるまでに回復し、『日本近代美術Ⅰ』に続く著作集を準備中であった。主要な著書に『ギリシャの島々』(日本経済新聞社 1965年)、『近代日本美術史 1幕末・明治』・『近代日本美術史 2大正・昭和』(有斐閣 1977年)、『現代日本の美術 11鳥海青児岡鹿之助』(集英社 1975年)、『日本近代美術論』(瑠璃書房 1988年)、『海外学術調査Ⅱ アジアの自然と文化』(共同執筆 日本学術振興会 1993年)などがあり、論文には「ヨーロッパ油彩画の日本土着過程の研究 泥絵、硝子絵」(『多摩美術大学材料学研究室紀要』1976年)、「北斎 小布施町祭舞台天井画竜図」(『多摩美術大学研究紀要』1 1982年)、『近世(18世紀以降の)アジアに於けるブルシャン・ブルーの追跡』 (『多摩美術大学研究紀要』2 1985年)、「インドネシア硝子絵調査Ⅰ、Ⅱ」(『多摩美術大学研究紀要』3 1987年)、「鳥海青児・初期を中心に」(『鳥海青児展』図録、練馬区立美術館 1986年)、「昭和初期の美術」(『多摩美術大学50年史』1986年)などがある。

出 典:『日本美術年鑑』平成10年版(391頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月25日 (更新履歴)

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例)「佐々木静一」『日本美術年鑑』平成10年版(391頁)
例)「佐々木静一 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10694.html(閲覧日 2024-04-26)

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