入江泰吉

没年月日:1992/01/16
分野:, (写)

 写真家の入江泰吉は、1月16日脳こうそくのため奈良市の国立奈良病院で死去した。享年86。大和路の社寺や仏像、風物を撮り続けた入江は、明治38(1905)年11月5日奈良市に生まれた。大正12年、奈良女子師範付属高等小学校高等科を卒業、同15年写真技術修得のため大阪へ出、昭和8年大阪市南区鰻谷仲之町15に独立し写真技術一般の営業を始め、また、写真家としての活動も開始した。同12年、アマチュア写真研究会「光藝倶楽部」を創立主宰する。同16年、日本報道写真協会に加入。同19年に戦災に遇い奈良市水門町49に転居、以後、奈良風物の撮影に当り、とくに終戦直後の混乱期に古都の文化財が破壊されるのを恐れ、大和路の社寺などの撮影に専念するに至った。同23年、東京で「仏像写真展」を開催したのをはじめ、同33年には写真集『大和路』を出し写真家として本格的にデビューした。この間、国画会写真部会員として、同展に制作発表も行う。“滅びの美しさ”を主情的に表現する作風で知られ、風景撮影では古代のイメージを重んじ、自動車や電柱を徹底的に排除した。同51年、「古色大和路」「萬葉大和路」「花大和」の三部作で、写真家としては土門拳についで二人目の菊池寛賞(第24回)を受賞した。同56年、我が国では初の写真個人全集『入江泰吉写真全集』全8巻(集英社)を出版する。この他、伝教伝導文化賞、日本写真協会功労賞など受賞も多く、出版物は共著も含めて百冊を越える。没後の平成3年5月、入江泰吉の全作品8万点余を収めた奈良市写真美術館が開館した。

出 典:『日本美術年鑑』平成5年版(308頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2015年12月14日 (更新履歴)
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