平松令三

没年月日:2013/05/14
分野:, (学)
読み:ひらまつれいぞう

 真宗史を中心とする仏教史学者の平松令三は5月14日、死去した。享年93。
 1919(大正8)年12月5日に三重県津市一身田町にて郵便局長であった平松乾三の長男として真宗高田派本山専修寺の門前に生まれる。一身田尋常高等小学校、津中学校、静岡高等学校を経て、1939(昭和14)年に京都帝国大学に入学。太平洋戦争時下であった41年に卒業、大学院に進学し赤松俊秀に師事。その後、京都帝国大学文学部(国史研究室)副手、京都府寺院重宝臨時調査事務嘱託として赤松俊秀の助手を務める。46年3月に郷里の一身田郵便局事務員となり、7月には祖父(平松伊三郎)以来の同郵便局長を務めた。その一方で、京都帝国大学文学部の出身であり、師事した赤松俊秀と第三高等学校での同級生であった高田派本山専修寺法主常盤井堯猷の進めにより、同寺に伝わる親鸞以来の法宝物類の調査を継続的に行う。あわせて三重県下の文化財調査、研究を行い、市町村史の編纂に携わる。78年には長年務めた一身田郵便局長を辞職。この間に高田短大、三重大学の非常勤講師を務め、同年、三重県教育委員会より教育功労者表彰を受けた。80年4月に龍谷大学特任教授、その後、84年より専任教授に就任し、1990(平成2)年に退任した。平松が親鸞真蹟研究、真宗文化財研究の第一人者としての実績と信頼が絶大であったことは、本願寺史料研究所研究員、三重県史編纂委員会座長、四日市市文化財保護審議会委員、真宗連合学会理事長、真宗高田派本山専修寺宝物館主幹、高田学会委員などを歴任したことに示されている。長年の地元文化財の保護に対して、97年度津市政功労者(文化財保護)表彰の栄誉を受けた。その学風は現物に即して歴史学の見地から卓抜した所見を述べるところに特色がある。研究対象とした親鸞および高弟・真佛の筆跡研究は今日でも揺るぎが無い。また、光明本尊、親鸞伝絵、絵系図をはじめとする中世真宗の文化財研究においても以後の研究の指針を示した。単著に『真宗史論攷』(同朋舎出版、1988年)、『親鸞真蹟の研究』(法蔵館 1988年)、『高田山の名宝』(高田派坊守会、1994年)、『親鸞聖人絵伝』(本願寺出版社 聖典セミナー、1997年)、『親鸞 歴史文化ライブラリー』(吉川弘文館、1998年)、『親鸞の生涯と思想』(吉川弘文館、2005年)などがあり、とくに『親鸞の生涯と思想』により2009年9月1日付で龍谷大学より文学博士の号を得た。その記念誌として『高田学報』別冊にて『文学博士拝受記念 親鸞とその美術』(2010年、高田学会)を刊行。その前言には「あと三ヶ月で九十歳という高齢になってからの博士号は、余りに遅いと言われる向きもありましょうが、私にとって博士号は生涯の念願であり、私の人生を締めくくるものとして、誠に嬉しく存じております」と述べている。さらに真宗研究のための基礎史料となる『真宗史料集成』(同朋舎出版)全13巻のうち第7巻「伝記・系図」(1975年)、第4巻「専修寺・諸派」(1982年)を編集。引き続き、真宗文化財の大系である『真宗重宝聚英』(同朋舎出版)の第2巻・光明本尊(1987年)、第4巻・親鸞聖人絵像・親鸞聖人木像、親鸞聖人絵伝(1988年)、第10巻・絵系図(1988年)、第5巻・親鸞聖人伝絵(1989年)、第7巻・聖徳太子絵像・聖徳太子木像、聖徳太子絵伝(1989年)を担当した。いずれの業績も仏教史研究にとどまらず、その後の中世真宗の文化財研究に計り知れぬ恩恵をもたらした。このほか、『真宗新辞典』(法蔵館、1983年)、『佛光寺の歴史と信仰』(思文閣出版、1989年)、『高田本山の法義と歴史』(同朋舎出版、1991年)、『真宗人名辞典』(法蔵館、1999年)、『圓猷上人・圓超上人遺芳』(真宗高田派宗務院 2003年)、『御堂日録 第1冊 寛保3年(1743年)~寛延3年(1750年)複刻』(真宗高田派宗務院、2006年)、『影印 高田古典』全六巻(真宗高田派宗務院、1996~2008年)などの編集に携わり、共著・監修として『親鸞聖人』(徳間書店、1973年)、『親鸞聖人眞蹟集成』全10巻(法蔵館、1973~74年)、『顕浄土真実教行証文類 専修寺本』(法蔵館、1975年)、『郷土史事典 三重県編』(昌平社、1981年)、『善導大師五部九巻 高田専修寺本』全4巻(法蔵館、1986年)、『親鸞大系 歴史篇』全11巻(法蔵館、1988~89年)、『念仏と流罪―承元の法難と親鸞聖人―(承元の法難800年特別講演会講演録)』(本願寺出版社、2008年)、真宗教団連合編『親鸞』(朝日新聞出版、2009年)がある。晩年は視力低下に悩まされたが、12年には「親鸞伝の諸問題(上)」(『高田学報』100号、高田学会)を論文として公表し、最晩年の13年春に親鸞750回忌記念として開催された真宗教団連合主催の『親鸞展』(京都市美術館、会期2011年3月17日~5月29日)では準備委員に名を連ねた。

出 典:『日本美術年鑑』平成26年版(454頁)
登録日:2020年04月03日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「平松令三」『日本美術年鑑』平成26年版(454頁)
例)「平松令三 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/822851.html(閲覧日 2024-05-26)

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