森郁夫

没年月日:2013/05/30
分野:, (学)

 帝塚山大学名誉教授で歴史考古学を研究し、特に瓦研究の第一人者でもあった森郁夫は胃癌のため5月30日に死去した。享年75。
 1938(昭和13)年2月25日、名古屋市に生まれる。60年3月、國學院大学文学部史学科卒業後、64年4月、奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部、71年には飛鳥藤原宮跡調査室に着任。85年4月 京都国立博物館に転出、学芸課考古室長として着任し、1995(平成7)年3月まで勤務した。同年4月、帝塚山大学教養学部(現、人文学部)教授として着任、97年4月に帝塚山大学考古学研究所長を兼務。98年1月 「古代寺院造営の研究」で國學院大學より博士(歴史学)の学位を取得した。2004年4月には自ら設立に尽力した帝塚山大学附属博物館の初代館長に就任。10年3月、帝塚山大学名誉教授に就任した。和歌山県文化財センター理事長、三河国分寺整備委員会委員長、日本宗教文化史学会評議員などを務めた。
 國學院大学では大場磐雄に師事し、当初は地鎮や鎮壇具に関する研究を始め、処女論文「密教による地鎮・鎮壇具の埋納について」(『佛教藝術』84号)を発表。66年、出土遺物のうち瓦を担当する奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部考古第三調査室に着任したことを受け、本格的に瓦の研究を始めた。平城京や飛鳥宮・藤原京、その寺院跡等での豊富な調査経験を踏まえ、瓦に留まらず、京内の土器の研究も進めた。84年には三都土器研究会を立ち上げ、99年には古代の土器研究会として発展、会長に就任している。京都国立博物館に在任中は「畿内と東国」展(1988年)、「平城京」展(1989年)、「倭国」展(1993年)など精力的に考古分野の特別展を企画、開催した。特に「畿内と東国」展は全国及び朝鮮半島までの瓦を概観した古代瓦に関する初めての大規模な展覧会であり、古代瓦の持つ歴史的価値を多くの人に知らしめた。古代における瓦生産は当時の最先端の技術であり、寺院造営を表象するとの主張は『瓦と古代寺院』(六興出版、1983年)、論文集『日本の古代瓦』(雄山閣出版。1991年)などの著書にまとめられ、その後の瓦研究ひいては古代史研究に大きな影響を与えた。晩年、その集大成として『日本古代寺院造営の研究』(法政大学出版局、1998年)を出版。没後も遺稿を纏めた『一瓦一説』(淡交社、2014年)が出版されている。
 帝塚山大学に移ってからは、同考古学研究所、同附属博物館の設立に奔走。研究所を拠点として歴史考古学研究会などを主宰し、ここから多くの瓦研究者が育っていった。さらに同研究所においては市民大学講座も定期的に開催したほか、一般向けの著作も多く、法隆寺夏季講座の講師を長年務めるなど一般市民への文化財理解の普及にも努め、多くの古代史ファンに慕われた。

出 典:『日本美術年鑑』平成26年版(454-455頁)
登録日:2016年09月05日
更新日:2016年09月05日 (更新履歴)
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