本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年5月1日

 五月一日 金 菊地が九時頃ニやつて来た 間も無く磯谷がオレの画をわくニ張て持て来た 三人で話をして居る処ニ久米から端書で母様が今朝五時ニ死なれたと云事が云て来た 直ニ車を命じて菊地と久米の処ニ出かけて行た 此の時が十二時頃 La Morte の写真取りなどが有つてオレ等がめしを食ニ清新軒ニ行た時ハ早一時半頃だつた めし後芝口で煙草を買ひそれから合田の処や菊地の処で話をして菊地を引張て六時頃ニ内へ帰つて来た 半時間も立つて合田もやつて来て一緒ニめしを食ひ合田が巴里の Port Royal ニ居た頃ニ Conservatoire ニ出る女と知り合ニ為り其女がおぢさんと称して老人の amant を持つて居たなどと云話が出て非常ニ面白かつた 十時半頃迄二人共話して行た 今日中村へ手紙と尾張楼への払の為替を送つた

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