本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年7月18日

 七月十八日 土 朝七八時の頃大雨 十一時頃ニ天真道場ニ行て画を直し又コンポジシヨンの評をし清新軒でお昼を吉岡君と一緒ニたべ一時少しすぎニ約束通り寒菊ニ行たら誰も来て居ず 花火が二十五日ニ延びたので来ないのぢやないかなどと色々考へて待て居た 其内ニ井上が子分を四人程連れて馬車を二台用意してやつて来た 直ニ奴の呼付けの芸姐三人を呼び寄せて出懸る事と為つた 向島の植半と云処ニハ始めて来て見た 中々いゝ 静かで涼しいが蚊が多い 水あびなどもやらかした 夜ニ入つて向島の桜の土手を風ニふかれて馬車で通る心地ハ一刻千金だ 月が出て居たので一層感が強かつた 再び寒菊ニ乗り込み十時頃ニ別れて帰る

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